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「助けに来ましたよ、聖羅さん」

聞き覚えのある声がしたかと思うと、聖羅を捕まえていた中年男の腹から赤い剣先が突き出した。

「!?」

男は不思議そうに自分の腹から生えた剣を見下ろしていたが、やがて、ドッとその場に倒れ伏した。

「あ、赤屍さ…」

「大丈夫ですか、聖羅さん」

「あ…あ…なんてことを…!これは、本物じゃなくてお化け屋敷の演出なんですよっ!」

やっと働き始めた脳がまた現実逃避を始めてしまいそうになりながら、赤屍に訴える。

「おや、そうでしたか」

赤屍は至って冷静な口調でそう告げた。

「では、この場にいる方達を全て殺して、なかったことにしてしまいましょう」

「えっ……」

「まずは、そこのお二人から」

押し入れのドアが内側から開き、友人二人が中からまろび出てくる。
その表情は恐怖で凍りついていた。

「いやっ!」

「助けてぇっ!」

廊下へと逃げ出そうとした二人を、赤屍は無情にもあっさりと斬り捨てた。

「きゃあああああ!!」

ドサッ、ドサッ、と続けて二人が倒れるのを見て、聖羅は悲鳴をあげた。

「大丈夫ですか?何が、」

異変を察したのだろう。
まだ刺し傷と血糊を残したままの女性が階段を上がってきた。

「逃げて!」

叫んだ聖羅の目の前で、女性の胸に剣が突き立てられる。

「いやあああああ!!」

頭のどこかで、ぷつんと音がした気がした。

「おっと」

気を失って倒れそうになった聖羅を赤屍が抱きとめる。

「やれやれ…少々やり過ぎてしまいましたか」

「えっ、嘘っ!聖羅気絶しちゃったの!?」

倒れていた友人二人がガバッと起き上がる。

「あーあ…やっちゃいましたね」

「すみません、赤屍さん」

「貴女方のせいではありませんよ。私も楽しくやらせて頂きましたから」

「赤屍さんノリノリでしたもんね」

「あの…大丈夫ですか?」

剣で貫かれたはずの女性と中年男性も起き上がり、申し訳なさそうに声をかけてくる。

「いささかショックが大きすぎたようです。ですが、まあ、大丈夫でしょう。お二人ともご協力ありがとうございました」

「いえ、依頼を頂いた以上、こちらも仕事ですので」

髭面の強面に気弱そうな表情を浮かべながら中年男性が頭を掻いた。

「聖羅さんのことはご心配なく。皆さんご協力感謝します」

「いえいえ、聖羅のことよろしくお願いしますね、赤屍さん」

「ええ」

何も問題はない。
この計画を考えた当初からの予定通りだ。

赤屍は聖羅を抱き上げながら、その場にいる者達に微笑んでみせた。

「聖羅さんのことは私に任せて下さい。私が責任を持って面倒を見ますから。最後まで……ね」


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