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「キミは緑の手を持っているんだね」

私をそう評したのは、入学して僅か一週間で寮長の地位にのぼり詰めたというリドル寮長だった。
植物が好きで自ら立候補して庭園の手入れをしていた私は、自分の頑張りが認められたようで、リドル寮長の言葉がとても嬉しかったことを覚えている。

他の留学生達に比べ、成績がいまいちパッとしない私が唯一誇れるものが植物の扱いだった。

私が丹精を込めて育てた薔薇達。
このハーツラビュル寮にある庭園の中でも一番見事に咲いているそれに、花のかんばせを寄せて芳香を楽しんでいたリドル寮長が振り返る。

「今度のお茶会の主役は、この美しい薔薇達とキミだ。綺麗に着飾っておいで」





「そりゃお前、リドル寮長に気に入られてんだよ」

慌てて相談したエースにはそんなことを言われてしまった。

「明らかにオレ達と扱いが違うもんな」

「そんなことはないと思うけど」

そんな理由で贔屓をするような人ではない。女王の法のもとに誰に対しても公正公平な人だ。

「自覚無しかよ」

「厄介だな」

デュースまでもが頷いている。

「とにかく、相談する相手が違うって。こういう時はやっぱりあの人だろ」

エースに追い立てられるようにやって来たポムフィオーレ寮で、私はヴィル先輩の前で固まっていた。

「あら、化粧映えしそうな子ね。いいわ、面白そうだから手伝ってあげる」

それからは夢のような時間だった。
まるで魔法をかけられたような気がする。
ふわふわした気持ちのままお茶会の会場に向かうと、リドル寮長が出迎えてくれた。

「ボクの想像以上だ。とても綺麗だよ」

ごく自然に手を取られて席までエスコートされる。
周りにいる人達からの視線が痛い。でも、それはマイナスのものではなくて、むしろ好感を持って迎えられているような。きっとリドル寮長がエスコートしてくれているからだろう。

席に座ると、リドル寮長も自分の席についた。テーブルには美味しそうなお菓子やケーキが並んでいる。そして、もちろんお茶のセットも。

「さて、お集まりの諸君」

いよいよ始まるのだと緊張しながら耳を傾けていると、リドル寮長が言った。

「既におわかりだと思うけど、彼女はボクのものだ。観賞するのは構わないが、決して手は出さないように」

「はい、寮長!」

「えっ」


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