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「累がサイトを閉鎖した。下弦の伍だ」

まるで生き物のように重力の向きや部屋の構造が変化する異空間、無限城。
その広大な城の中に主である無惨の声が朗々と響き渡る。
この場に集められた下弦の鬼達は、皆畏怖の念に身体を強張らせながら無惨の前に平伏していた。

「私が問いたいのは一つのみ。『何故、下弦の鬼はそれほどまで弱いのか』」

「十二夢月に数えられたからと言って終わりではない。そこから始まりだ」

「より文章力を磨き、より無惨夢を書き、私の役に立つための始まり」

「ここ百年余り十二夢月の上弦は顔ぶれが変わらない。萌える無惨夢をハイペースで更新してきたのは常に上弦の鬼達だ。しかし、下弦はどうか?幾つ夢を書き上げた?」

(そんなことを俺達に言われても……)

下弦の陸は心の中でぼやいた。

「“そんなことを俺達に言われても”何だ?言ってみろ」

無惨に内心の声を言い当てられて、下弦の陸がギクッと身を強張らせる。

(思考が…読めるのか?まずい…)

「何がまずい?言ってみろ」

「お許し下さいませ!鬼舞辻様、どうか!どうかお慈悲を!」

無惨の左腕が太い肉の触手へと変わり、下弦の陸を捕らえて、平伏したままの他の下弦の鬼達の頭上高く持ち上げる。

「申し訳ありません!申し訳ありません!申し訳…」

下弦の陸の目の前で触手の先端がぐぱあと大きく口を開いた。

「ギャッ」

バリッと触手が下弦の陸に食らいつく。
バリバリと音を立てて食われる下弦の陸の血が、平伏したままの他の鬼達の上から降り注ぐ。
ごくん、ゲェフ、と触手が下弦の陸を『完食』した。

「私の夢よりも煉獄のほうが好きか」

「!!」

下弦の肆がギクと身体を跳ねさせる。

「…いいえ!!」

「お前はいつも、ちょっと休憩と言っては煉獄夢メインのサイトを回って読み耽っているな」

「いいえ、あれはあくまでも文章力を磨くための参考にしているだけで、私は貴方様のために命をかけて無惨夢を書きます!」

無惨は僅かに沈黙したかと思うと、恐ろしい目付きで下弦の肆を見下ろした。

「お前は私が言うことを否定するのか?」

絶望の表情を浮かべる下弦の肆を、無惨の触手がグシャと押し潰す。
再び響く、バリバリと咀嚼する音。

(だめだ、おしまいだ。思考は読まれ、肯定しても否定しても殺される。戦って勝てるはずもない)

下弦の参は逃げ出したが、次の瞬間には頭だけの姿となって無惨の手に握られていた。

「最期に何か言い残すことは?」

「私はまだお役に立てます!もう少しだけ御猶予を頂けるならば、必ずお役に!」

下弦の弐が必死の形相でそう叫ぶ。

「具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の文章力でどれ程の夢が書ける?」

「煉獄寝取られ無惨夢を…!煉獄と密かに想い合う夢主を、貴方様が鬼畜な手段を使って奪い取り、快楽落ちさせる裏夢を書いてみせます!」

無惨は持っていた下弦の参の頭をブンと放り投げた。
ゴトンと落ちたそれは、下弦の弐の元へとゴロゴロと転がっていった。

「なぜ私が煉獄如きから奪い取らねばならんのだ。さては貴様も煉獄推しだな?甚だ図々しい。身の程を弁えろ」

「……!違います!違います!私は」

「黙れ。何も違わない。私は何も間違えない。全ての決定権は私に有り、私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利はない。私が“萌える”と言った夢が“萌える”のだ。お前は私を寝取り相手にした。死に値する」

下弦の弐も殺された。

最後に残った下弦の壱に向かって無惨が問いかける。

「お前はどんな夢を書いている?」

「そうですね」

下弦の壱は、うっとりした様子で、ほう…と息を漏らした。

「私は夢見心地でございます。貴方様直々にお読み頂けること」

下弦の壱が続ける。

「私は悲運にも先立ってしまった夢主が転生して貴方様と運命的に巡り合うエモい転生甘夢を書いております。もちろん、最後はハッピーエンドで、えっちもありです。再会した二人が想いのたけをぶつけあうように激しく情熱的にまぐわうドエロいシーンには特に力を入れております」

「……」

先が尖った触手がドギュッと勢いよく下弦の壱の首に突き刺さった。
ドクン、ドクン、と音を立てて無惨の血が注入されていく。

「気に入った。私の血をふんだんに分けてやろう」

「ただしお前は血の量に耐えきれず死ぬかもしれない。だが、『順応』できたならば、さらなる文章力を手に入れるだろう」

「そして私の役に立て。萌える無惨夢を書け」

「ドエロいシーンのある無惨夢を増やせば、もっと血を分けてやる」


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