都内某所にある、とある猫カフェ。
ここには少々癖のある個性豊かな猫達が揃っていた。
その中でも人気があるのが神7と呼ばれている猫達だ。
特にトップ3の三匹は不動の人気を誇っていた。

「こんにちはー」

それまで思い思いに寛いでいた猫達が、我先にと競い合うようにしてその女性客に駆け寄っていく。

「いらっしゃいませ、苗字様」

「こんにちは!バレンタインだから皆と一緒に過ごしたくて来ちゃいました。お出迎え嬉しいなあ」

足元に群がる猫達をにこにこと見下ろす彼女は、何故かこの店の猫達から異様に好かれていた。

「今日はチョコの代わりにおもちゃとおやつを持って来たんです」

「はい、チェックさせて頂きますね。…はい、オッケーです。お席にどうぞ」

「ありがとうございます」

この店では大抵の猫カフェがそうであるように、購入したてで未使用のおもちゃであれば、持ち込んで遊ぶことが出来るのである。
おやつも同様だ。

なまえがソファに座ると、すぐに一匹の黒猫がその膝の上に飛び乗った。
しなやかな身体を丸めて我が物顔で膝上を占領しているのは、この店で人気No.1の黒猫、蔵人である。

脚に頭をすり寄せて挨拶をしていたことで出遅れた形となった金茶の猫、No.2の零が、横合いからなまえの膝に手を乗せて蔵人を睨み付ける。

「出ていってくれませんかねぇ。僕のなまえの膝の上から」

「僕の?冗談でしょう。なまえさんは私のものですよ」

にゃあにゃあ言い争う二匹をよそに、No.3の百之助はぴったりとなまえの太ももにくっついてお気に入りの場所をキープしつつ、マイペースに毛繕いをしていた。
時々毛繕いのついでになまえの手や足を舐めてやっている。

それセクハラじゃない?と店長は思ったが口には出さなかった。

「はい、おやつだよー」

封を切ったチャオちゅーるを差し出すと、蔵人と零はお行儀よく順番にペロペロし始めた。
このあたりの上品さが彼らが人気者たる所以である。

「相変わらず良い子だねえ。百ちゃんもね」

なまえに背を撫でられた百之助は、あくびをすると、彼女の太ももにぴったり身体をくっつけたまま目を閉じてうとうとし始めた。
どこか斜に構えていて人間を見下している百之助がここまで心を許すのはなまえだけだ。

「僕を見てくれ、なまえ。こんなにも君が好きなんだ」

零がなまえの胸に前足をかけて伸び上がり、その口元をペロペロしようとする。

「おっと、抜け駆けは許しませんよ、零くん」

蔵人がぺしと零の顔を前足で押さえて阻止した。

「なまえさん、今日のスカート、少し短過ぎませんか?綺麗な脚が丸見えですよ」

いつの間にか足元にやって来ていたNo.4の骸がなまえの生足をペロペロする。

「教えてくれ、君はなぜ死にに行く?」

No.7の半兵衛がすかさず骸に体当たりをかまして邪魔をしに入った。

「そんなおもちゃ如きで我輩が喜ぶとでも?ハァハァ…」

No.5のセブルスはなまえが繰り出すネズミのおもちゃに夢中だ。

「なんでも言ってください?俺は気位だけ高い連中とは違いますから」

No.6の長谷部は猫というよりもまるで忠犬のようになまえの傍らに控えている。

こうして猫カフェのバレンタインは穏やかに過ぎていくのだった。


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