「お口に合いませんでしたか?」

「あ……いえ、そんな」

あまりにも幸せ過ぎて、夢を見ているのではないかと思っていましたとは言えずに曖昧に誤魔化す。

「どのお料理もとても美味しかったです」

赤屍さんの手作りだというテリーヌショコラも。
バレンタイン当日は二人とも仕事で忙しかったから、遅くなったけどこの週末に逢うことになったのだった。
赤屍さんがレストランのバレンタインディナーもかくやと思うほどの手料理をふるまってくれて、私達はお互いに用意してきたチョコを交換した。

「何だか赤屍さんに甘えっぱなしで申し訳ないなあって」

「もっと甘えて下さって良いのですよ」

ワイングラスを置いた赤屍さんがテーブルを回って私の隣に腰を降ろす。
優しく抱き締められて泣きそうになってしまった。疲れているせいか、最近は涙脆くなってしまっていけない。

「貴女は良く頑張っています。今は苦しいかもしれませんが、きっといつかその努力が報われる日が来るでしょう。少なくとも私は貴女がどれほど頑張ってきたか、よく知っていますよ」

赤屍さんによしよしされるともうダメだった。涙腺が決壊した私を胸に抱き締めて、あやすように背中を撫でてくれる。

誰かに優しくされるのって、こんなに心地よいことだったんだ。こんなに幸せな気持ちになれることだったんだ。
それを再確認しながら、赤屍さんの胸に甘えて縋りつく。

「お化粧崩れちゃってますよね……ごめんなさい」

「構いませんよ。私が綺麗に落としてあげますから、一緒にお風呂に入りましょう」

まずはポイントメイクから。
クレンジングオイルを染み込ませたコットンで目元と口紅を拭き取り、乳化させたクレンジングオイルで丁寧に円を描くようにくるくるとファンデーションを落としていく。
ホットタオルで汚れごと拭き取ると、顔がさっぱりした。

「では、行きましょうか」

赤屍さんに抱き上げられる。
そのまま脱衣所へと連れて行かれ、手伝って貰って服を脱ぐ。
浴室に入ると、温かい湯気に包み込まれた。
赤屍さんの膝の上に抱っこされたまま、温度調節をしたシャワーをかけられる。

「熱くありませんか?」

「大丈夫です」

そうして髪と身体を洗われ、心地よさにうっとりしている私を抱き上げて赤屍さんは湯船に浸かった。
思わず、はあ……とため息が漏れる。

「随分お疲れだったようですね」

「赤屍さん不足で死にそうでした」

「これで補給出来ましたか?」

「ううん。もっと」

赤屍さんがクスと笑って私に口付ける。
やわやわと脚を揉みほぐされて、ぱんぱんに張っていたそこのむくみが改善されていくのがわかった。ああ、いい気持ち。
だけど、私はもっと気持ちがいいことを知っている。

「では、続きはベッドで」

湯船から立ち上がる赤屍さんの首に腕を回して縋りつきながら、私は期待に打ち震えていた。


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