「ごめんなさい!」

恥ずかしさのあまり、なまえは思わず逃げ出してしまった。
人並みをかき分けて進み、テラスへ出てようやく一息つく。
さっきの男性には悪いことをしてしまった。せっかく話しかけてくれたのに。

「やっぱり、街コンなんて向いてないのかな……」

「同感だ」

突然聞こえてきた声にぎくりとするなまえの前で、闇が揺らいだ。
暗闇に紛れていて気付かなかったのだが、テラスには先客がいたようだ。

「同僚に引っ張って来られたのだが、やはりこういったパーティーは性に合わない」

闇の中から現れたのは、先ほどの男性とはまた違うタイプの魅力的な男だった。
その彫りの深い精悍な顔立ちと鍛え抜かれた立派な体躯、見事なグリーンアイからして、外国の血が混ざっているのは間違いない。
思わず見惚れてしまったなまえに、彼は笑いかけた。

「似た者同士、少し話をしよう。お嬢さん、君の名は?」

なまえは頷いて名乗った。

「なまえか。いい名だ。俺は赤井秀一。FBIだ」

「日本にはお仕事で?」

「ああ。話すと長くなるが、ある組織の残党を追っている」

それから二人は色々な話をした。
殆どなまえが喋っていたようなものだが、聞き上手なのか、赤井もなまえとの会話を楽しんでくれているのがわかった。

「少し喉が渇いたな。何か飲み物を取って来よう」

「あ、私も一緒に行きます」

二人が中に戻ろうとした時、ちょうど見計らったようなタイミングで先ほどの男性がテラスに入って来た。

「やっと見つけた……」

切なげに微笑んでなまえを見た彼は、降谷零と名乗った。

「さっきは驚かせてすまない。僕と少し話をしてもらえないだろうか」

「悪いな、降谷くん。彼女は俺のパートナーだ」

「赤井秀一……」

苦々しい表情で降谷が赤井を睨みつける。

「行こう、なまえ」

「は、はい」

会場へ戻っていく二人を、降谷はじっと見送っていた。

「すまないな。前後が逆になってしまったが、改めて言おう。俺は君が好きだ」

「嬉しい。私も赤井さんのことが好きです」

「では、これから俺達は恋人同士ということで構わないかな?」

「はい、よろしくお願いします。あの、さっきの人は」

「彼とは複雑な因縁があってな。それは追々話すとしよう。いまそれよりも心配なのは、どうやら彼が君に惚れているらしいということだ」

赤井は少し困ったように笑って言った。

「降谷くんがそう簡単に諦めるとは思えん。きっと全力で君を奪いに来るだろう」

赤井の予感は見事的中した。

その後、なまえに一目惚れした降谷が猛アタックしてくることになるのだが、そんなこととは知らず、いまは二人きりで想いが通じあった甘い空気に浸るなまえと赤井だった。



赤井エンド


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