初めての恋の季節。

発情期のメスの鳴き声や匂いに触発されて、真奈の双子の弟の綱吉はすっかり舞い上がってしまっているようだった。

だがしかし、猫はメスの側に相手を選ぶ権利がある。
綱吉が京子に選ばれなければ、彼の想いは決して実ることはない。
ただ切なく時が過ぎていくばかりだろう。


「ツナは京子ちゃんと交尾したいの?」

「んなあッ!?」

真奈としてはまったく他意なく尋ねた質問だったのだが、綱吉は可哀想なくらい動揺した。

「交尾って…お前っ、ナニかわかってんのか!?」

「うん。えっちすることでしょう?」

綱吉はもうまともな言葉すら発せなかった。
茹で上がった顔で双子の姉を見てあわあわしている。

「そうかあ、ツナも男の子だもんね」

これが例えば、いかにもなワケ知り顔や、ニヤニヤ笑いで放たれた発言ならば、これ程までにはダメージを受けなかっただろう。
しかし、母親譲りの慈愛に満ちた微笑みつきで言われてしまってはただもう赤面してあたふたするしかない。

「いやっ、違うって!こ、こここ交尾とかそういうんじゃなくて、な、なんていうか…その、」

「うん」

「す……す…好き……なんだ…」

「うん」

「誰にも言うなよ…」

「うん」

皆知ってるけど。

赤い顔をして雑草をぶちぶち引き抜いている綱吉の隣に座りながら、真奈は弟の想いが報われることを願った。


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