「あれ、真奈じゃね?」

中庭にあるプールで泳いでいたベルフェゴールは、回廊を歩く少女の姿を見つけて指差した。

「真奈様はボスの部屋にいらっしゃるはずだ」

同じくプールの中にいたレヴィ・ア・タンが不思議そうに首を傾げながら答える。

「でも、真奈だろ、あれ」

ベルが言って再びそちらを見る。
間違いない。
見慣れた少女の姿だ。

「おーい!一緒に泳ぐか!?」

ベルが手を振ると、少女は驚いた顔をして柱の陰に消えた。

その反応を奇妙に思ったベルがプールから上がり、少女が隠れた柱へと歩み寄る。

「あれ?」

しかし、そこには誰もいなかった。

「おい、マーモン、お前も見たよな?」

マーモンは難しい顔をして黙っていたが、やがて、

「ボスの所に行こう」

とだけ言って宙を滑っていった。

「あ、待てよ」

ベルが慌ててプールサイドのビーチチェアに置いてあったパーカーとタオルを取ってマーモンの後を追いかける。

それを見ていたレヴィも急いでプールから上がったが、二人の姿はもう見えなくなっていた。


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