元々は初代ボスであるジョットが自警団として結成したのが始まりだというボンゴレファミリー。

功績を重ねるにつれ住民からの支持や信頼を得ていき、強力で巨大な組織となりつつあったそれを、二世がマフィアとして完成させたらしい。
その二世が個人的に所有していたという別荘に真奈はザンザス達とともに滞在していた。
ヴァリアーのアジトと違い、イタリアの北のほうにあるこの別荘はとても過ごしやすい。

「二世ってザンザスに似てるよね」

9代目から届いた死炎印入りの勅令書に目を通していたザンザスが、真奈の呟きに反応してちらりと彼女を見る。

初代にそっくりな綱吉。
二世にそっくりなザンザス。
今のボンゴレの基盤を作ったとも言える過去の偉大なボス達に彼らの容姿が似ているのは、果たしてただの偶然なのだろうか。
今までの出来事を振り返ってみても、やはり因縁めいたものを感じずにはいられなかった。
単なる先祖返りや隔世遺伝ではない気がする。

「特に眉毛とか…いたっ!」

何だか少し怖いと感じた気持ちを誤魔化すようにそう言った途端デコピンされた。
手加減はしてくれているはずだが痛い。

額を手でさすりながらザンザスのほうを見ると、彼はまだ真奈を見ていた。
真っ赤な瞳と目が合う。
それが一瞬で近づいてきて、身を引くこともできぬ内に唇にやわらかいものが触れた。
反射的に口を開けば、すぐさま侵入してきた舌に舌を絡めとられ、口の中に苦い酒の味が急速に広がっていく。
最後にかぷっと軽く真奈の唇を噛んでザンザスは顔を離した。
至近距離から睨まれる。

「生意気な事をぬかすのはこの口か」

「だって、事実…いたっ!」

二度目のデコピンを食らって赤くなった額をさすりながら、もし遺伝だとしたら、ザンザスの子供を生んだらやっぱりその子の眉毛も二股になるんだろうかと考えた。
父親似の男の子なら、それはそれで嬉しいかもしれない。

「大人しくしていろ」

ザンザスは引き出しから何やら分厚いファイルのような物を取り出して仕事に戻っている。

真奈も机の上に転がっていたシャーペンを手に取り、自分の前に広げて置かれたワークの残りを片付ける作業に戻った。
北イタリアのマフィアの別荘で夏休みの宿題をやってる女子高生なんて、たぶん世界に自分ぐらいのものだろう。


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