今日も一日よく働いた。

いつもより早く帰れそうだと思ったら後輩がミスをしてその尻拭いのために残業することになったり、
身に覚えのない問題について上司に叱られたり、
それはもうストレスが溜まりまくりの一日だったが、何とか乗りきって、こうして疲れきった身体を引きずるようにして帰路についている。

でも、大丈夫。明日出勤すれば、明後日からは四連休だ。

「あっ、忘れてた……!」

洗濯物を洗濯機に入れたままだったことを思い出してガクリと力が抜けそうになる。
一日水に浸けっぱなしにしてしまった。
こんなポカをするなんて、注意力が散漫になっている証拠だ。
連休前だからと浮かれていたわけではないけれど、言い訳は出来ない。

「はあ……」

重く沈んだ気分のまま家に辿り着くと、何故か電気がついていた。
まさか、とドアノブに手をかけるが、やはり鍵が開いている。

「お帰りなさい、なまえさん」

明るい声と笑顔に出迎えられた。
電気の人工的な灯りに照らされてキラキラと輝くミルクティー色の髪に、健康的な褐色の肌。
青空を映し込んだような美しい双眸が私に向けられている。

「安室さん?」

「すみません、勝手に入って。合鍵、使っちゃいました」

にこにこと微笑む安室さんに促されて家の中に上がり、彼について歩いていく。
朝、散らかっていたはずの部屋は、綺麗に整理整頓されて掃除機をかけてあった。
キッチンからは空腹を訴える胃袋を刺激してやまない美味しそうな香りが漂ってくる。

「食事の支度をしがてら、洗濯もしておきました」

洗濯機を回して、干して、畳んで、しまってくれたらしい。

「し、下着……!」

「箪笥にしまいましたよ」

見られた!

「もうお嫁にいけないっ」

「僕がもらうので問題ありません」

途中のコンビニで買った弁当が入ったエコバッグをやんわりと奪われる。

「今日も一日お疲れさまでした。食事にしますか?お風呂が先がいいですか?それとも──僕にします?」


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