「お帰りなさい。今日も一日お疲れさまでした」

金曜日。
職場から真っ直ぐ赤屍さんの家に向かうと、玄関で赤屍さんに出迎えられた。
優しく労われて、思わずほろりとしてしまう。

「どうしました?何かつらいことがありましたか?」

「実は……」

心配した赤屍さんに促されて、おずおずと口を開く。

「そうですか……そんなことがあったのですね。それはつらかったでしょう」

赤屍さんに事情を話すと、優しく抱き締めてくれた。

「大丈夫、貴女は間違っていませんよ。何があろうとも私は貴女の味方です」

「うう……赤屍さぁん」

「よしよし。好きなだけ泣いて下さい。落ち着くまでずっとこうしていてあげますからね」

赤屍さんに抱っこされ、背中を優しく撫でさすられる。
私は赤屍さんに縋りついてわんわん泣いた。
その間赤屍さんは背中を撫でながら優しく声をかけて慰め続けてくれた。

どれだけそうしていただろう。

涙が涸れ果てるかと思うほど泣いて、ようやく落ち着いた私は、小さな声で赤屍さんにお礼を言った。

「すみません……ありがとうございます」

「恋人として当然のことをしたまでですよ。お気になさらず。それより、お腹がすいたでしょう。食事にしましょうね」

「あっ」

ぐるぐるきゅーとお腹が鳴る。
いままで食欲なんてなかったのに。

「美味しいものを食べて、ゆっくりお風呂に浸かって、ゆっくり休めば、元気になりますよ」

「そうですね……」

赤屍さんとイチャイチャしながら食事の支度を手伝い、出来上がった料理を食べながらたくさん楽しい話をした。

それから一緒にお風呂に入り、隅々まで洗ってもらってから二人でゆっくり湯に浸かった。

いまはお風呂から上がり、ほかほかになった身体を預けて髪を乾かしてもらっているところだ。

「はい、終わりましたよ」

「ありがとうございました」

一緒にお布団の中に入り、赤屍さんの大きな身体に抱き包まれて、ぬくぬくとしたぬくもりを感じながら目を閉じる。

「眠れそうですか?」

「はい……あったかい……」

つらかった出来事の数々が頭の中を駆け巡る。
でも、赤屍さんに全て吐き出したお陰で、重苦しい気持ちになることはなかった。
むしろ、さっぱりした気分だ。

嫌なこと、つらいことを完全に忘れることは出来ないだろうけれど、私には全てを受け止めてくれる人がいる。
疲れて帰ってきた時に甘やかしてくれる人がいる。

あたたかい気持ちのまま、私は眠りに落ちていった。


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