ホグズミード駅に到着する頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。 紫から黒へのグラデーションを描く空の下、黒く影になった山や森が見える。 パパの言った通りだと、窓の外に目を向けたエリーは思った。 ホグワーツからの入学通知が来て以来、父はエリーに様々な事を教えてくれていた。 新入生はボートでホグワーツへ行くということ。 大広間で行われる組分けの儀式。 歓迎会とたくさんのご馳走。 パパは何でも知っている。 エリーは父を尊敬し、全幅の信頼を寄せていた。 父親であるセブルス・スネイプはホグワーツで魔法薬学の教授を務めているのだ。 「着替えたか?」 「うん」 ドアの向こうからかけられた声にエリーは慌てて答えた。 通路に出ていた少年がコンパートメントの中に入ってくる。 エリーが着替える間、外に出ていてくれたのだ。 彼の名前はトム・マールヴォロ・リドルJr。 魔法省の大臣であるトム・リドルの息子だ。 リドルはじっとエリーを見ると、長い指を伸ばしてネクタイを結び直してくれた。 黄昏どきの澄んだ空気の中、紅色のホグワーツ特急が静かにホームに滑り込んでいく。 昼間は汗ばむくらいの陽気だったのに、夜になったせいか、それともロンドンからかなりの距離を北上したせいなのか、外は肌寒い。 |