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すべてが終わったその後で。

大広間の喧騒と暖かな灯りから逃れるようにして、スネイプは城外に広がる闇の中へと足を運んだ。
そして、人知れず『それ』を葬り去った。
湖の畔の大きな木の下に。

静かなそこは少女のお気に入りの場所だった。
恐らく、その昔は『彼』のお気に入りの場所だったのだろう。
『彼』がなまえに教え、与えた場所。

すでに命の炎が消えて久しい『それ』は、この場所へと運ぶ間、スネイプの腕に硬く冷たい感触しか残さなかった。
かつては少女の柔らかな手によって愛でられていたに違いない黒い毛並みばかりが、物言わぬ塊となった今でもなお艶やかさを失っていない。

忘れても、失っても、想いは完全には消えない。
ただ忘却の海の底に沈むだけだ。
スネイプ自身そうであるということをよく知っている。
何年、何十年経とうとも消えぬ痛みがあることを。

息絶えた『それ』に縋って泣き叫ぶなまえに杖を向けたのは、彼女を喪失の苦痛から救いたいと願ったから。
自分と同じ苦しみを味わう事がないよう、なまえに忘却呪文をかけて記憶を消したのだ。

しかし、結局は同じことなのかもしれない。
忘却術で記憶を失ったなまえの心は今も確かに血を流し続けているのだから。
スネイプは本当の意味でその傷を癒してやる術を持っていない。

唯一彼女を救える存在は、愛する彼女を守って消えてしまった。

永遠に。


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