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「母君はお元気かの、トム」

「お陰様で」

にこやかに茶を勧めてくるダンブルドアに、トムは短く答えた。
内心「この狸爺め」と舌打ちしながらも、あくまでも表面上では優等生の仮面を崩さずに。

ホグワーツの変身術の教師であるこの魔法使いは、まだ赤子だった頃からトムを知っている。
孤児院から引き取ったトムを一人で育てるなまえを影から援助してきた人物がこのダンブルドアだった。

「先生には僕の後見人となって頂いて感謝していると、いつもそう言っています」

「わしは殆ど何もしておらんよ。君を育て上げたことに関しては全て彼女の功績じゃ。まさか、未婚の若い女性がマグルの孤児院に預けられていた赤子を引き取ってここまで育てられるとは思っていなかったからのう」

16年前。
突然ホグワーツにやって来てダンブルドアに面会を求めたなまえは、にわかには信じがたい話をダンブルドアに語って聞かせた。

未来から逆転時計を使って来たこと。
その逆転時計は壊れてしまい、もう戻れないこと。
悲しく恐ろしい未来の出来事のこと。
そして、トム・リドルのことを。

実際、彼女が携えてきた手紙がなければ、さしものダンブルドアも全てを信じきれなかっただろう。
その手紙は、未来のダンブルドア自身がこの時代の自分に宛てて書いたものだったのだ。

「今日はその件についてお聞きしたいことがあって伺いました──彼女の……なまえのことについて」

トムがあえてなまえを「母」と呼ばない事にダンブルドアは気付いていたが、静かに先を促すだけにとどめた。

「先生はご存知なのでしょう?教えて下さい」

黒曜石の瞳の中で、ほんの一瞬赤い光が煌めく。
それは寒気がするような意思の強さを感じさせる輝きだった。
ダンブルドアの顔にほんの僅かに警戒の色が滲む。

「彼女は──なまえは、何故16年前の姿のまま、年を取らないのですか?」

トムはそう言って、ダンブルドアの目を正面から見据えたまま、答えを待った。


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