雨足が強くなってきた。音が変わったので直ぐにわかる。 今頃は、ホグズミードに出掛けている生徒達が慌てて軒下に駆け込んでいることだろう。 次第に荒れていく天候に、今日はそろそろ帰ろうかと相談しているところかもしれない。 「この雨では、みな早めに戻って来るだろう」 窓を濡らす雨を眺めながら、リドルは脱ぎ捨ててあったシャツを拾いあげ、それに腕を通した。 ベッドの上では、まだなまえがぐったりと俯伏せにシーツに倒れ込んだまま、荒い呼吸に背中を波打たせている。 リドルはベッドの縁に座ると、その背を撫でた。 ぴくりと跳ねる肌に微笑を刻む。 「ルームメイトにこんな姿を見られてもいいのか?」 なまえは酷く気怠い体を起こしてリドルを睨んだ。 露になった体には、あちこちに赤い華が咲いている。 「ひどい…こんなに…」 特に胸元や太ももの辺りに集中して散っているそれを見て、泣きそうな顔をするなまえに、リドルはおかしそうに笑った。 それがまた様になっていて、何だか気に食わない。 なまえはむっとして自分の制服に手を伸ばしたが、その手を掴まれて引き寄せられた。 仰向けにころんと転がされる形になり、上からリドルが覗き込んでくる。 灼けつくように熱い視線が肌にまとわりつく。 「所有の証だ。消さずにそのまま残しておけ」 傲慢に言い放った唇が優しい口付けを落とした。 クルーシオ! クルーシオ! クルーシオ! なまえは心の中でリドルに向かって磔呪文を繰り返す。 それでも甘い口付けに容赦なく体と心は溶けていって。 「わかったな?」 そう念を押される頃には、すっかり頬は火照り、瞳は潤んでしまっていた。 完全にいつものパターンだ。 「ただいまー、なまえ」 「お帰りなさい」 「ほら、お土産」 「あたしもあたしも。はい、これ食べていいよ」 ベッドに腰かけていたなまえに、ホグズミード帰りの友人達がわっと群がる。 どの少女も皆びしょ濡れだが、楽しい時間を過ごしてきたのが笑顔に現れていた。 「雨が降らなかったらもっと遊べたんだけど」 「あ〜、早くシャワー浴びなきゃ」 賑やかに笑いあう友人達から山ほどの土産を受け取り、なまえもつられて笑顔になる。 実は、なまえもまたさっきシャワーを浴びてきたばかりなのだと彼女達は気付きもしない。 しっかりと着込んだ制服の下の素肌に無数の情痕が残っていることも、きっと知ることはないだろう。 ただ、なまえの太ももに我が物顔でぴったりと寄り添うようにして昼寝をしている黒猫以外は。 |