ハリー・ポッターが秘密の部屋の謎を解き、日記に宿ったトム・リドルの記憶と対決することとなった、二日前の夜。 なまえはいつものようにスリザリン寮の談話室で課題に取り組んでいた。 怪物の襲撃が続いていて命の危険に晒されているというのに、普段通り課題を出すなんてどうかしているとぼやく生徒も多い。 ただ、他の寮と違い、スリザリンの生徒達は落ち着いたものだった。 小声で秘密の部屋について話している者もいるにはいるが、その顔に怯えの色はない。 むしろ、6月に行われる試験のほうがよほど彼らの頭を悩ませているようだった。 「奴らに見つけられるはずがないさ」 向かいの寝椅子に座っているドラコの声が聞こえ、なまえは羊皮紙から顔を上げた。 パンジーか誰かが何か話しかけたらしく、ドラコは顔をそちらに向けて笑っている。 「逆に秘密の部屋の怪物に始末されるに決まってる。今更何をしたって無駄だ」 なまえの腿に寄り添って丸くなっていた黒猫が、片目を開けてドラコを見た。 「ねえ、本当に誰がスリザリンの後継者か知らないの?」 パンジーが尋ねる。 「知らない。知っていたらとっくに教えてるさ。そうだろ?僕達にとっては偉大なるスリザリンの子孫で、英雄なんだから」 まるで自分の手柄を語るように得意気な様子で話すドラコを小馬鹿にした目付きで眺め、黒猫は再び目を閉じた。 |