美味しいケーキに、山のようなプレゼント。 「Happy Birthday、クロリス。さあ、プレゼントだよ」 ルシウスからの祝いの言葉でクロリスの誕生会は始まった。 次々とプレゼントやお祝いのメッセージを持って舞い込む梟達に、両親はすっかり大わらわだ。 その代わりに、ルシウスがクロリスの傍らに付き添って甲斐甲斐しく世話を焼いてやっていた。 「美味しいかい? 沢山お食べ」 豪勢なバースデイケーキは彼の手作り。 この日の為にわざわざフランスから招いたパティシエにケーキ作りの魔法のコツを習ったという。 ふわふわの生クリームで輝くクロリスの唇を、ルシウスはうっとりと見つめていた。 「有難う、兄さま!」 ルシウスに促されてケーキをせっせと口に運ぶクロリスの唇には、ルシウスからの贈り物である、淡い桜色のルージュが薄く引かれている。 しかし、そうしてケーキを食べ終わる頃には、それはすっかり取れてしまっていた。 それに気が付いたルシウスが、クスリと笑んでクロリスの唇をナプキンで拭き取る。 「そのままじっとしておいで。私がつけ直してあげよう」 ナプキンで油分を拭われた唇を指先でつつくと、口紅を取り出して、そっと唇へと触れさせる。 当然、クロリスは男の人に口紅を塗って貰ったことなどないので、頬を染めて体を固くした。 「兄さま…」 「リラックスしていなさい。唇を固くしていると、ちゃんと綺麗に塗れないからね」 そんな事を言われても、そうなかなか緊張は解れるものではない。 ルシウスは一度唇からルージュを離すと、微笑を浮かべた顔を寄せて、ちゅっ、と軽く口付けた。 「兄さま、」 「しー。良い子だね、そのまま…」 頬を手で包み込むようにして固定し、何度も触れるだけのキスを繰り返す。 そうする内に、次第にクロリスの瞳はとろんと蕩けていき、体から力が抜けていった。 「可愛いよ、クロリス」 「ふ……ん、ん…」 最後に一度だけ深く口付けてから唇を離したルシウスは、ぼうっとしているクロリスに薄く紅を引いてやった。 清楚なピンク色がキスで濡れた唇に鮮やかに映える。 決して派手な色ではないのに、つやつやとして妙になまめかしくもあった。 「よく似合っている。本当に綺麗になったね」 キスで蕩けてしまったクロリスを抱き締めてルシウスが囁く。 「来年も、再来年も──この先ずっと、毎年君の誕生日をこうして祝いたい…こうして、愛しい君の側で」 切なげな声音の告白に、クロリスはルシウスの胸から顔を上げて彼を見上げた。 そうして、そっと瞳をじて唇を捧げる。 誰よりもクロリスを愛する男は、その可愛らしいおねだりに、すこぶる忠実に応えてくれた。 先ほど塗り直したばかりのルージュが、二人の熱で溶けてしまうほど、情熱的に。 |