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幼馴染みの関係などで良くある事だが、ある日突然、いつも何気なく接していた相手が異性なのだと気付いたりするもので……

「クロリス?」

いつものように抱き寄せようとした形に腕を広げたまま、ルシウスが首を傾げる。
綺麗な顔、綺麗な指、綺麗な声。
本当に、たった今、気が付いた。
彼に熱を上げている女の子達が騒ぐ理由が。
ルシウスは男の人なのだ。
それも、とても魅力的な。

「どうした?さあ、おいで」

その綺麗な男の人が、宝石のような瞳を細めて微笑みかけている。
微笑を描く唇を見て、クロリスは目眩がする思いだった。
あの唇…あれが、自分の唇に触れていたのだ。
それこそ数えきれないほどに幾度も。
そう考えるだけで泣きそうになる。

「頼むから、そんな風に私から逃げないでくれ。君に嫌われたのではないかと心配になるだろう?」

あっと思った時には、一息に距離を詰められていた。
掬うように抱き上げられて、美しい顔が間近に迫る。

「や……!」

「ダメだ。もう離さないよ」

逃れようと抵抗する体をしっかり抱き締められながら、唇を寄せられる。

「クロリス」

「……んん…っ」

甘い口付け。
今朝まで当たり前のようにされていたソレも、今では全く意味合いの違ったものになってしまっていた。
だが、ルシウスは何一つ変わっていない。
彼は初めから、そうして変わらぬ愛情を注ぎ続けてくれていたのだ。
水と光で花を育てるように、惜しみ無く。

「…今夜は、私の部屋へ来てくれるね?」

口付けに対する少女の態度の変化に気付いた男が、耳元で囁く。
今まではその言葉の意味さえわからず、無邪気に拒み続けていたクロリスは、自分を見つめる甘く溶けたアイスブルーの瞳に頬を染めた。
いつまでも蛹のままではいられない。
こうして愛を知った少女は、『少女』から『女』へと羽化するのだ。


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