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全寮制と言う場所は閉鎖された空間だ。
そして、そんな環境は、しばしば歪んだ崇拝概念を生み出す。

崇拝される側の素養としては、優れた能力であったり、カリスマ性であったり──ルシウス・マルフォイも当然その対象の一人だった。

「生意気なのよ、あなた」

そう言って、クロリスを取り囲んだのは5人の上級生。
どの顔も同じ嫉妬と妬みの色に染まっている。

「たいして可愛い訳でもないくせに、大事にされていい気にならないで」

「従妹じゃなかったら相手にもされてないわよ」

人気の無い教室に残忍な忍び笑いが響く。

「そんな事はない」

不意に割って入った氷のように冷えきった美声に、女達の笑顔が凍りついた。
背後から伸びて来た腕がクロリスを引き寄せる。
片腕にクロリスを抱き、もう片手に持った杖を女達に突きつけながら、ルシウスはその形の良い整った唇に、先ほどまで彼女達が浮かべていたものと同じ嘲笑を刻んだ。

「私も馬鹿にされたものだな……では、聞くが、そう言う君達は、自分が特別な存在だとでも思っているのかね?」

一人一人の顔を見据えていくアイスブルーの瞳に、女達は顔を歪めて俯いた。

「君達の知能でも理解出来るよう、はっきり言っておくが、クロリスは私にとって唯一無二の価値ある存在であり、私の宝だ。今後一切このような馬鹿な真似はやめたまえ。──命が惜しければ、な…」

恐れをなして蜘蛛の子を散らすように去っていく女達を一瞥すると、ルシウスはクロリスの顎に指を掛けて顔を覗き込んだ。
優しく微笑みながら。

「もう大丈夫だ。…おいで、寮へ帰ろう」


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