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ホグワーツの冬は厳しい。
12月ともなると、まさに凍りつくような冷気で覆われるほどだ。
生徒達はマントにくるまるようにして塔へ移動したし、魔法の炎を持ち歩いては、そこここで焚火をして暖を取っている姿も見かけられた。
スリザリンの談話室も例外でなく、石造りの構造も手伝って、いっそう寒く感じるほどである。
暖炉では豪々と炎が燃え盛っているが、外から戻って来たばかりの体はなかなか暖まらない。

週一度の真夜中の天文学の授業を終えて戻って来たクロリスは、かじかんだ手を炎にかざして、擦り合わせた。
一緒に帰ってきた同級生達は既に寝室に引き取っているが、せめて少しでも暖まってから寝室へ戻ろうと思ったのだ。

「クロリス?」

ふと聞こえた声に顔を上げると、従兄のルシウスが寝間着にガウンを羽織った姿で階段を上がって来るところだった。

「天文学の授業から帰って来たのかな?今夜は冷え込むから寒かっただろう」

暖炉の前で震えている従妹を見て、直ぐに事情を察したらしい。
ルシウスは優しい微笑を向けたと思うと、少し待っていなさいと言いおいて、部屋へ引き返した。

「そこに座りなさい。こう言う時には、足浴が一番だ」

数分も経たない内に戻ったルシウスの手には、湯気の立つ洗面器があった。
暖炉の前のソファに座るように促し、素直に腰掛けたクロリスの足元に跪く。
ルシウスの男性らしく大きくてしなやかな手が自分の靴を脱がせるのを見て、クロリスはびっくりして腰を浮かせた。

「だ、だめ、汚いから……!」

「汚いものか。君は爪の先まで美しいよ」

「……もう…そんな事ばっかり…」

クロリスが赤い顔で文句を言う間にも、ルシウスは靴を脱がせた足から手早く靴下を剥ぎ取っていく。
露になった白い足首を恭しく掴むと、彼は爪先からゆっくりと湯に浸けていった。
じわりとした温もりが足先から這い上がってきて、クロリスはほうっと息をついた。
寒さに強張っていた体から力が抜けて、楽になっていくようだ。
足首から先がつかっている湯からは、品の良いラベンダーの香りが淡く立ちのぼっている。

「暫くそうしていたまえ。直ぐに温まるだろう」

「うん…有難う、兄さま」

優しい従兄らしい気遣いに、何だかくすぐったいような気持ちになりながらクロリスは頷いた。
足からぽかぽかと温まっていく感触が心地よい。
ルシウスは寛いできたクロリスの様子を見ると、傍らにあったブランケットを取って、肩に掛けてやった。
そのまま隣りに腰を降ろす。
湯がぬるくなってくると、ルシウスは杖を洗面器に向けて、熱を発する魔法をかけて温度を上げ、クロリスが温まるまでそうしてくれた。


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