薔薇園を臨む白いテラスで。 冷たいプールの水の中で。 甘い闇が支配する寝室で。 クロリスとルシウスは、夏の間、ほんの僅かな時間でさえも離れるのが惜しいとばかりに愛しあった。 夏が終われば、クロリスはホグワーツに戻らなければならない。 そうなればまた暫くは会えなくなってしまうからだ。 水の中を泳いでいく、しなやかな白い身体。 まるで人魚のようだと思いながら、ルシウスはその身体を捕まえる。 擽ったそうに笑う少女に口付けると、触れ合った唇の間から零れた空気が、細かい泡となって上がっていった。 くすくす笑いながら逃れようと藻掻く様子がたまらなく艶めかしい。 このまま悪戯してしまおうか、と考えたのがわかったのだろうか。 不意に、彼女はするりと彼の腕の中から脱け出して水面へ向かっていった。 「兄さま、酷い。溺れてしまうかと思ったわ」 後を追って水面から顔を出したルシウスに、そんな風に抗議する様さえ、愛おしい。 「そうか?私はとっくに溺れているよ」 君に、と囁けば、愛しい人魚は頬を染めて再び水底へと潜ってしまった。 ──窒息しないよう愛すにはどうすればいいかな。 そう思考を巡らせながら、ルシウスも青い世界へと戻っていく。 こんな風に溺れてしまうのならば、悪くはないかもしれないと笑って。 |