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このホグワーツ城の寮は、男子は女子寮には入れないが、逆は可能だ。

今夜も枕を抱えてやってきたクロリスをルシウスは優しく迎えてくれた。
どうせ同室の生徒はクラッブとゴイルなので、受け入れる側も慣れたものである。

「昔話はしなくていいのかな?」

クロリスをベッドの中に招き入れながらルシウスが笑う。
クロリスはちょっと頬を膨らませてみせた。
からかう口調だったのならともかく、まるで小さな子供に語りかけるような言い方だったので。

「もうそんな小さな子供じゃないわ」

「そうだね。すまない」

柔らかく微笑む歳上の従兄は、地下室の石壁に囲まれた寝所にあっても相変わらず麗しい。
凄まじい美貌というものは無駄な装飾品など必要としないものなのだと、クロリスはルシウスの存在を通して知った。
プラチナブロンドを肩に垂らしたルシウスは、ただのシンプルな黒い寝間着姿だというのにゾクリとするほど色っぽい。

「さあ、早くお入り」

「うん」

毛布を捲って促すルシウスの横にごそごそと潜り込み、クロリスは暖かい身体に自分の身体をぴったりと添わせた。
いい匂いがする。
クラッブだかゴイルだかの寝台が小さく軋む音が聞こえた。
しかし、それも、外界との接触を断ち切るようにベッドの周囲のカーテンが閉められてしまえば、隣の部屋も同然の精神的な距離感が出来た事によって、それほど気にならない。

定位置に身体を落ち着けたクロリスを、ルシウスの腕がゆるく抱きしめた。
自分よりも強くて大きな身体に包み込まれる安心感が、ふわふわとした心地よさとともに眠気を誘う。

「ゆっくりおやすみ、私のクロリス」

「おやすみなさい、兄さま」

こうして、今宵も、魔法の城のベッドの上、王子様に護られて幸せな夢を見る。


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