「いつまで私を放っておくつもりだ?」 背後から抱き締めているルシウスが、低く甘い声で囁く。 耳の下あたりを蠢く唇の感触に、なまえは絡みつくしなやかな腕をペシッと叩いた。 「ダメ。まだ書き終わってないもの」 「家への手紙だろう?どうせ今夜はもう梟小屋には入れないのだから、明日書けばいい」 耳に吐息を吹き込み、舌先で擽るルシウスに、なまえは怒った顔を作って振り返った。 「明日はホグズミードに行く日でしょう? 今日中に書いて朝一で出しに行かないと間に合わないわ」 「それならば、帰ってからゆっくり書きなさい」 己のほうに顔を向けたのを良い事に、ルシウスは繰り返し唇を寄せる。 「ダ・メ!帰ったら宿題をするの!」 薄く柔らかな唇の口付けを胸についた手で引き離そうと抵抗しながら、なまえは尚も突っぱねた。 「もう…手紙を書くだけの少しの間が待てないの?」 「待てない」 腰に回された腕に力がこもり、しっかりと抱き寄せられる。 唇を食むようにして甘くついばまれ、しっとりと重ねられれば、もう抵抗らしい抵抗は出来ない。 「約束だ。宿題は私が手伝ってあげるから、終わったら一緒に梟小屋へ行こう」 「……うん」 両頬を大きな手で包み込み、微笑を湛えた氷の青が間近から覗き込む。 「良い子だね、なまえ…」 手を滑らせた背中で、月光を編んだかのような美しいプラチナブロンドがさらりと揺れる。 ほどなくして。 書きかけの手紙とその横に放り出された羽ペンを照らしていた灯りが消えた。 |