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ある日の夕暮れ。
花屋でアルバイトをしているなまえが、バケツに花を移し終えてふと顔を上げると、窓越しにこちらを見ていた外国人男性と目があった。

夕闇に浮かびあがる綺麗なプラチナブロンドと、冷たく澄んだアイスブルーの瞳。
年齢は30後半から40代といったところだろうか。
だが、日本人のその年代の中年男性とは違い、経験を積んだ者特有の妙な男の色気がある。
黒い外套を身に付けた身なりの良いその男は、軽く微笑んでそのまま店内に入って来た。

「失礼、お嬢さん。花を頂きたいのだが」

流暢な日本語で尋ねる男に、どんな花が良いか問い返すと、彼はふっと笑った。

「この店で一番美しい花を」

一番美しい花、と言われ、キョロキョロ辺りを見回す。
――と、不意に身体がふわりと浮いた。
間近で氷のような色をした瞳が笑んでいる。

「君の名前は?」

「え、あの…なまえ、です…」

「なまえ、君のような美しい花は、私の側にいるのがふさわしい。……フフ、こらこら、レディが暴れるものではないよ」

ようやく事態を把握してじたばたするなまえを片腕でがっちり担ぎ上げながら、男はもう片手で懐から小切手を取り出した。
店長を視線で呼び寄せる。

「代金はこれで。真に価値あるものにはいくら注ぎ込んでも惜しくはない。好きな金額を書きたまえ」

「は、はあ……」

呆然としながら小切手を受け取る店長に妖艶な微笑を残し、男はまだもがいているなまえを甘い声で宥めながら店先に停められた高級車へ去って行った。


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