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「可愛い娘じゃないか」

片想いの少女の写真を見せた時の父のその反応に、嫌な予感を感じてはいたのだ。
それは明らかに『女』を見る眼だったから。
だが実際に自分の父親に組み敷かれている少女を見た時には、ドラコは文字通り頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。

「きゃっ──!?」

「覗き見とは感心しないな、ドラコ」

慌ててシーツを胸元に引き上げようとするなまえを自らの胸に抱き包みながら、ルシウスが振り返る。
そこにいるのは紛れもなく自らの父でありながら、同時に見知らぬ『男』でもあった。
乱れて美しい顔に振りかかったプラチナブロンドさえも、何か背徳的な魅力に満ちていて美しい。

「取り込み中だ。話があるならば、後にしなさい」

追い詰められた小動物のように震えているなまえとは対象的に、ルシウスは落ち着きはらった様子でそう告げる。
密かに想っていた少女を盗られて悔しいのか、それとも父親を少女に盗られたようで悔しいのか、それすらもうわからない。
ドラコは蒼白な顔のまま、曖昧な返事をしてドアを閉めた。

重厚な木製のドアの向こうから、少女の泣き声が聞こえる。
そして、それを宥めるルシウスの優しく甘やかな声……

ドアに背をもたれて、ドラコはズルズルとその場に座り込んだ。

「大丈夫だ。何も心配はいらない」

はっきりと聞きとれたその言葉の後、暫し間を置いて、再び少女のか細い喘ぎ声が響き始める。

「ぁ…ダメ……やぁっ…」

「なまえ…」

弱々しく抵抗する少女を、獲物を喰らう獣のようにゆっくりと味わっていく様子が目に浮かぶようだ。

暫くして立ち上がったドラコは、ぐいっと目元を袖で拭うと、宿題を片付ける為に自室に向かって歩き出した。


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