「…悔しい…!」 木陰に座るリドルの、無造作に投げ出した足に身を伏せてむせび泣く。 「どうして!?私だって頑張ってるのに、どうしてあの子だけ認められるのっ!?」 彼は何も言わない。 呆れているのか、憐れに思っているのかさえ、彼の脚に顔を埋めているせいでわからない。 「私だって同じくらいやった!負けてない!負けてないのに!!なのに、どうして皆あの子には声を掛けて、私を無視するの!?」 怒りと屈辱で、閉じた瞼の裏が真紅に染まる。 「教えて、リドル。皆はどうしてあの子だけもてはやして、私をないがしろにするの?」 顔を上げると、ルビーのような瞳が真っ直ぐなまえを見据えていた。 冷たい二つの手がなまえの頬を包み込む。 「お前が愛されていないからだ。皆、お前ではなく、自分達と同類のつまらない醜い生物であるあいつが可愛いのさ、なまえ」 優しく優しく髪を撫でる手。 甘く甘く耳に響く声。 「世界は不公平だ」 「汚れた生き物に汚染されているせいで」 「誰もお前を認めない」 「誰もお前を愛さない」 「誰もがあいつのような醜い人間を大切にし、お前には目もくれない」 「お前は誰にも認められない」 「世界が狂っているからだ」 「―――壊して」 なまえが囁くと、まるで愛の告白を聞いたかのように、リドルの唇が甘美な弧を描く。 「全部壊して。この世界を、全て」 震える唇にリドルの唇が重なる。 なまえは彼の首にすがりついた。 それしかすがれるものがないから。 「では、見ているがいい。なまえ」 幼子を宥めるように背を撫でられる。 「僕が、この世界を滅ぼす様を。僕の隣で」 私の心の安息は死の香り。 私の心の安寧は人々の断末魔によってもたらされるだろう。 そして、世界は滅び去るのだ。 |