先に視線を逸らしたら、負け。 ただそれだけなのに、こんなに辛いとは…… なまえは今にもくじけそうになる心を叱咤し、リドルを睨み返した。 目の前に座っている彼は、片肘をソファの肘掛けに立てて頬杖をつき、じっとこちらを見つめている。 なまえの必死な顔がおかしかったのだろう。 綺麗な形をした唇がクスッと綻び、真紅の瞳が僅かに細められた。 元々ハンサムな顔立ちが、そうして笑うと、長い睫毛が紅玉に影を落として、酷くなまめかしく見える。 わざとだ。 わざとに違いない。 どうすればより魅力的に見えるかを心得ていて、なまえが直視出来なくするつもりなのだ。 微笑みながら熱い眼差しを注がれて、彼の計算通りに動揺したなまえは、頬に血がのぼるのがわかったが、意地でも目を逸らさなかった。 良く言うではないか。 肉食獣と目が合った時は、先に目を逸らした途端に襲われてしまうのだと。 だが、しかし。 やはり、リドルのほうが一枚上手だった。 「可愛いな」 「!!」 優しく微笑んでそんな不意打ちをかけるものだから、なまえは堪らず真っ赤になってガバリと立ち上がってしまった。 逃げ出そうとしたその腕を、素早く伸びてきたリドルの手が掴んで引き寄せる。 「いやっ!離してっ!馬鹿!意地悪っっ!」 「心外だな」 殆ど泣きそうになりながら喚くなまえをキスで宥めて、リドルが囁く。 「遊んで欲しいと言うから付き合ってやったんだろう?お前の負けだ、なまえ。ゲームの勝者にご褒美は?」 肉食獣と目が合った時は目を逸らしてはいけない。 食べられてしまうから。 |