※兄妹 なまえより二つ年上のグリフィンドール生のミネルバ・マクゴナガルは、キリッとした美人だった。 同世代の女生徒のように上ついたところがなく、きっちりとまとめた髪と、細い金属製の眼鏡が更に理知的に見せている。 何に対しても公平な彼女は、スリザリン生であるなまえにも差別するでなく接していた。 「ミネルバは卒業したらどうするの?」 「私は教師になるつもりよ。校長とダンブルドアにも、次のホグワーツ教員試験に申し込むと告げてあります」 彼女は最終学年となった今年、首席に選ばれていた。 そんな彼女らしい選択だとなまえは納得した。 「兄さまと一緒ね。兄さまも卒業したらホグワーツの教員になりたいと言っていたわ」 「リドルが?」 レンズ越しに怪訝そうな眼がなまえを見る。 「彼は魔法省に入るものだとばかり思っていたけれど」 確かに、なまえの双子の兄であるトム・リドルは、まだ5年生でありながら、将来有望な生徒として教員からも一目置かれている。 魔法省から誘いが来ているとの噂もあり、殆どの生徒が彼は魔法省に就職するのだと思っていたし、なまえもそれは同じだった。 「私もそう思っていたんだけど…」 なまえは何と答えて良いものやら迷った。 秘密の部屋を見つけて以来、リドルは妹のなまえに隠れて、取り巻き連中と何やら画策している事が多くなっていた。 ホグワーツの教師になりたいと言い出したのも、純粋に教鞭を取る事への憧れだけではないように感じる。 「何か問題でも?」 年上の少女が追求しようとした時、不意に二人の間に影が射した。 黒いローブに包まれた背中が割って入り、なまえの視界からミネルバの姿が消える。 「やあ、ミネルバ」 感じの良い笑顔を見せてさりげなく間に割って入ってきたのは、なまえの兄だった。 「こんにちは、トム・リドル」 「話の邪魔をしてすまないが、妹は連れて行くよ」 「ええ、どうぞ」 表面上では礼を失っさないままに年長の少女を牽制し、リドルはなまえの肩を抱いてその場から連れ出した。 「余計な事を喋るな。あれは将来敵になるかもしれない女だぞ」 角を曲がった辺りで、リドルは真紅の瞳で軽く妹を睨みつけた。 「お前はただ僕の傍にいればいい。そう教えたはずだ」 「…うん…」 不安そうな顔をするなまえに、ふっと笑う。 周囲に人影がないのを確かめると、リドルは素早く唇を寄せた。 「良い子だ、なまえ」 その口付けは甘く優しいものだったが、蛇が獲物を殺さず麻痺させる毒のようなものだ。 そして、なまえの体は既に隅々まで彼に与えられた毒に犯されていた。 |