長いトンネルを滑り降り、洞窟を進んで行くと、やがて細長い神殿のような場所に出た。 「ト…」 名を呼ぼうとしたなまえを腕で制し、リドルは通路の奥を見据える。 蛇の柱が立ち並ぶ通路の先、湿った緑がかった薄暗がりの中に巨大な老人の石像があった。 「…サラザール・スリザリンだ」 リドルの真紅の瞳が静かな歓喜の情に輝いている。 水路に挟まれた石畳を彼は像に向かって歩いて行く。 ──このままでは、取り返しのつかない事になる。 何か、とても恐ろしい事が起こってしまう。 そんな予感に、なまえは凍りついたままリドルの背を見送った。 水音が不気味に耳を打つ。 リドルは高い柱の間で立ち止まり、スリザリンの顔を見上げた。 「目を閉じていろ。僕がいいと言うまで、そこを動くな」 真紅の瞳がチラリとこちらを振り返り、また石像へと向けられる。 蛇が威嚇する時のような、低い息の漏れる音が響いた。 目を閉じているせいで何が起こっているのかわからないが、前方で重い音がするとともに、空気が動く。 湿った石の上を、巨大な何かが滑る音。 「蛇の王…そうだ、僕がスリザリンの継承者、お前の新しい主だ。バジリスクよ」 リドルの笑い声が近付く。 「なまえ」 名を呼ばれて、大きな手で頬を包み込まれる。 そっと目を開けると、嬉しそうな、優しい笑顔を浮かべたリドルの顔があった。 「僕は、自分の成すべき事がわかったよ」 貴方の抱える暗闇が深すぎて 全てが闇に沈んで何も見えなくなる 貴方以外は、何も |