幼い頃から、白く穢れのない物を汚すのが好きだった。 まっさらな紙のように降り積もった新雪を踏み、自らの足跡を付けると、ぞくぞくしたものだ。 これは、きっと、ある種の支配欲なのだろう。 誰にも汚された事の無い、純真無垢な生き物を己の色に染めてみたいと。 本能がそう命じるのだ。 「トム…貴方、いったい何をするつもりなの…?」 この女の、不安そうなこの表情が好きだ。 庇護欲と嗜虐心を堪らなくそそられる。 「お前を抱こうとしている」 「そっ、そうじゃなくて!」 意図した通りに一瞬で顔が赤く染まるのが楽しい。 押し倒したなまえにのしかかった状態のまま、僕は身を折って笑った。 可愛い女だ。 杖を取り上げられ、抵抗する事も出来ずにいるこの愛しい玩具は、まだ赤い顔をしながらも不満げに抗議する。 「取り巻きが話しているのを聞いたの。貴方が何か…」 「僕が何かしようとしているとして、それが『良くない事』ならば、お前はそれを止めるか?」 「…それは……」 顔をよぎるのは迷いだろうか? ──何を今更。 この先に何が待ち受けているとしても、どうせ僕から逃げられはしないのに。 黙って微笑みながら、殊更優しく頬を撫でてやると、複雑な表情をしていた顔の強張りが溶けていく。 縋るような目をするから、望み通り何も考えられなくなるよう、唇を重ねてやった。 良い子だ、と耳元へ囁けば、容易く体を震わせる。 この玩具は、甘い蜜と毒が好きなのだ。 人はこれを愛と呼ぶのだろう。 なまえ、僕のなまえ。 そのあまりの愚かさと愛しさに、僕は未だにこれを手放せずにいる。 |