1/1 


シャワーから出て、灯りの落とされた寝室の中をぐるりと見回す。
求める姿は、大きな寝台の上にあった。
ベッドの縁に腰掛けているのは、細身の長身をナイトガウンに包んだ、リドル。
ランプの灯りを映して揺らめく真紅の瞳が、静かにこちらを見つめていた。
高鳴る鼓動に竦んでしまいそうになる足をなんとか動かして、なまえはゆっくりと彼のもとへ向かう。

「怖いか…?」

冷たい両手に頬を包み込まれ、そう問われる。
微かに頷いたのを手の平で感じとったリドルが、ふっと笑った。

「わかった。なるべく優しくしてやる」

どうしようもなく震える体を宥める為か、優しく唇が重ねられる。
冷たく柔らかい唇は、そのまま頬をなぞるように耳へと滑っていった。

「心配するな。すぐにお前からしてくれと頼むようになるさ」

「そっ…そんな事しないわ!」

いつもの口調でからかわれて、真っ赤になって怒る。
彼は喉で笑いながら、その体を寝台に横たえた。

「そうだ。そうして、いつものように怒っていればいい。──そんなところが堪らなくそそられるのだから…」

一年で一番熱い夜が、ゆっくりと更けていく


  戻る  
1/1

- ナノ -