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心地よい疲労と睡魔に身を任せ、ぐったりとシーツの海に沈みこむ。
背中にかかるリドルの重みさえもが愛おしい。
漏らした甘い吐息は枕へ吸い込まれて消えていった。

そのまま眠りに落ちようとしたなまえを、しかし、傲慢で独占欲の強い恋人は許さなかった。

「寝るな」

情事の名残りの滲む艶めいた声で囁いて、リドルはなまえの白く晒されたうなじへ、そして無防備な背中へと、唇を落としていく。
ちり、と肌を吸われる感触に、なまえは枕に頬を押し付けたまま小さく呻いて抗議した。

「も、やだ……いっぱいしたのに…」

「まだ足りない」

リドルのさらさらした黒髪が背中に触れ、徐々に下方へと移動する唇に合わせて肌の上を滑った。
くすぐったいような、腰の奥がぞくりと痺れるような、そんな甘やかな感触に強引に意識を繋ぎとめられて、なまえは潤んだ眼差しを背後へと向ける。
案の定、楽しげに微笑んでいる綺麗な顔がそこにあった。
知性と王者の品格を湛えた双眸は欲に濡れ、不穏な赤い光をちらちらと瞬かせている。
こうなるともう何を言っても無駄だという事を、なまえはこれまでの経験でいやと言うほど解っていた。
見つめる先で二つの宝石が緩やかに細められる。

「そうか、無理矢理されるのが好みか」

「!? ち、違っ」

「では大人しくしていろ。優しくしてやる」

優しい口付けとともに再開される行為。
宣言通り、愛撫の手はとろけるほどに優しく、身体の奥に眠る情欲を煽り立てていく。
既に何度も抱かれていたせいで身体がうまく動かないこともあり、なまえは抵抗らしい抵抗も出来ぬまま、優しくも強引な愛撫に翻弄されていった。

「ぁ……く、…トム……!」

わななく唇が甘い喘ぎと共に恋人の名を呼ぶ。
リドルは満足そうに笑んで上体を屈めると、深く唇を重ねてやった。
結局こうなるのは解りきっていたはずなのに、まったく無駄な抵抗をするものだ、と可笑しく思いながら。

たとえ眠れる森に奪われたとしても
何度でも奪いかえすまでだ

両腕を広い背中に回し、しっかりとしがみついてくるなまえの身体をリドルもまた強く掻き抱いた。


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