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※兄妹


子を孕んでから、なまえは呆れるほどよく眠るようになった。
つわりが酷いのかと聞いて見れば、とにかくただ眠いのだと言う。
一種の防衛本能のようなものなのか、あるいは、二人分の命を背負うことになった体が、それだけ休息を必要としているのか。
それこそ胎児そのものの体勢でベッドで丸くなって眠っている姿をよく見かけるようになった。

乳母が言うには、妊婦には睡眠とともに適度な運動も必要らしいので、今まで軟禁していた塔から、今は滅びた純血の旧家が暮らしていたという古い館へと住みかを移した。
この館の敷地内にはありとあらゆる強力な人避け魔法をかけてあるから、ここならば人目につかずに庭を自由に散策することも可能だ。
何より環境が出産に適している。
偉大なるスリザリンの血筋を継ぐ子の誕生に、これ以上ふさわしい場所はないだろう。

なまえはまだ禁忌への恐怖が拭いきれないのか、単に鳥籠が変わっただけだと拗ねている。
それでも、やはり自由に外を歩けるのが嬉しいらしく、素直に甘えてくることもある。
腹の中の子も順調に育っているようだ。
腹を撫でてやると、時折中で動いているのが感じられる。

予定通りに行けば、我が子の誕生は12月31日になるはずだ。
両親である、僕達と同じ日に。
娘ならば、なまえに似ればいい。
息子ならば、僕に。

なまえ。

なまえ。

僕の可愛い、たった一人の妹。
これでもうお前は逃げられない。
罪からも僕からも、永遠に。


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