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リドルには妙な色気と迫力がある。
迫力のほうは、彼の全身から放たれる威圧感と、持って生まれたカリスマ性によるものだが、色気に関しては彼自身の魅力に加えて服装による効果も大きいのではないかとなまえは考えていた。

普段リドルが着ているのは当然ながらホグワーツの制服だ。
ストイックな黒に、スリザリンカラーの緑。
彼にはその配色がとても良く似合っていた。
そして色っぽい。
勿論、あからさまにいやらしいのではない。
それはストイックな服装だからこそ、そこはかとなく漂ういやらしさとでも言うべきものだった。
こんな事を考えているなどと本人に知れたら、冷ややかな目で流し見られた挙げ句、「変態め」と笑われてしまうことだろう。
あるいは、意地悪に笑いながら「欲求不満か?」と苛められてしまうか、だ。
──もっとも、彼に焦がれる女の中には、そんな風に冷たくされたり馬鹿にされても構わない、むしろ蔑んで!苛めて!と望む者も相当数いそうではあったけれども。

そして今夜。
ただでさえ色香漂うイイ男であるリドルは、あろうことか浴衣を身につけていた。
これがまた、黒髪や白い肌に映えて、びっくりする程よく似合う。
異国の衣装を着こなしたハンサムな長身の英国人男性とくれば、それだけで人目を惹く。
注目の的だ。
しかし、同時に畏怖の念をも与えてしまうらしく、興味津々だが近寄る事は出来ず、みな遠巻きに眺めているだけで声をかけてくる者はいなかった。
見ているだけでひれ伏したくなるような威圧感のせいかもしれない。

(マフィアとか殺し屋だと思われてたらどうしよう……)

祭りの夜は、みなハイになるのか喧嘩も多い。
殺気だった若者に絡まれはしないかと妙な心配をしながら、なまえはリドルの腕絡めていた腕に力をこめた。
そんな事になったら、祭りの会場は阿鼻叫喚の修羅場と化すだろう。

「何だ」

リドルが怪訝そうに尋ねてくる。
ちょうど林檎飴を買ったところだったのだが、どう見てもカタギには見えないその屋台のお兄ちゃんでさえ、ヘコヘコと頭を下げて丁寧に礼を述べながらリドルに飴を手渡していた。

「う、ううん…何でもない」

首を振ったなまえに訝しげに瞳をすがめながらリドルが林檎飴を差し出す。
それを受け取ったなまえは、気を取り直して舐め始めた。

「いやらしいな」

「えっ…な、何が?」

「その舐め方だ」

赤い舌でちろちろと飴を舐めていたなまえに、リドルが笑って言う。

「まあ、最近は舌の使い方も上達してきたようだからな、その飴も早く舐め終わるんじゃないか」

「ば、馬鹿ーっ!」

「次はあれにするか」

抗議を無視して、リドルはチョコバナナの屋台に視線を向けた。

「……うっ……」

欲しいけど、からかわれるのがわかっていては素直にねだれない。
逡巡するなまえに、リドルが、ふっと微笑む。

「それとも……チョコだけ買って帰って、別のモノに付けて食べるか?」

「ううんチョコバナナを食べるすごく食べたいなチョコバナナ」

「そうか」

早速買いに向かうリドルに寄り添って歩きながら、なまえは花火が終わってから自分の身にふりかかるであろう危機を回避する方法を考えた。
真剣に考えた。


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