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揺れている。
本体の動きにあわせて、ランタンの明かりで浮かび上がった影が、ゆらゆらと蠢いている。

口付けから解放された途端、不足していた酸素を取り込もうと焦って呼吸をしたなまえを見下ろし、リドルはふっと笑った。
そうして、また口付けられる。

甘ったるい声は音になる前にすべて彼の口の中に吸い込まれていった。

彼の肩越しに、金文字でタイトルが書かれた背表紙がずらりと並んでいるのが見える。そのどれもが、ホグワーツの授業では決して使われる事はない、閲覧禁止の区分に厳重に保管されているだろうと思われる内容の本ばかりだ。
闇の魔術に関する著書である。

ここは必要の部屋。
部屋求め、扉を開いた者が、その時必要としている場所と物を提供してくれるという、ホグワーツ城の中でもっとも不思議で貴重な部屋だった。

「こんな便利な方法があるなら、スラグホーンから聞き出す必要はなかったな」

初めてこの部屋の特性を知った時、リドルはそう言って残念がっていた。
必要な情報を手に入れる為に、彼はスリザリン寮の寮監であり魔法薬学の教授であるスラグホーンを上手くおだててそれを聞き出したのだ。
そして、哀れなスラグホーンは、晩年までその事を後悔することになる。

外の世界の音はここには届かない。
見回りをしているはずの管理人でさえ、こんな場所で忍び逢う男女がいるなどとは想像もつかないだろう。

唇と唇が離れた隙間で、はあ、ふ、ふぅ、とせわしない呼吸を繰り返す。

その瞬間を迎えるのはいつも少し怖い。
リドルの背中に腕を回してしがみつくと、なまえはきつく目を閉じた。
下腹部の奥にじわじわと熱が広がっていく感覚。
リドルの息が髪にかかるだけで胸が熱くなる。

「こら、寝るな」

急激な眠気に襲われそのまま寝入ってしまいそうになったところを、頬を摘ままれて起こされた。

「ん…もどるの…?」

「戻らない。どうせ見つからないのなら、朝までここにいても変わらないだろう」

寮に戻るわけでもないならいいのにと思ったが、リドルが手際よく後始末を始めたのを見て、そういうことかとなまえも身体を起こそうとした。

「もういい、寝てろ」

軽く睨まれ、呆れたように溜め息混じりに言われる。
甘やかされているのか苛められているのか悩むところだ。

「このままずっとここにいられたらいいのに…」

太ももの内側をトロリとしたものが伝い落ちていく。
リドルの答えは聞こえなかった。


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