9月1日。 今年もホグワーツ魔法魔術学校の大広間では、いつもの如く、組分け帽子による一年生の組分けの儀式が行われ、その後に続けて歓迎会が行われた。 今夜の天候は晴れ。 星がまたたく夜空を映した天井の下では、大勢の子供達の笑い声や話し声、フォークやナイフと食器が触れ合う音が響いている。 黄金色の皿の上から最後のデザートが消え去ると、ダンブルドアはお腹いっぱいご馳走を食べた生徒達に向かって、そろそろ寝る時間だと宣言した。 「一年生、こっちだ」 それぞれの寮の監督生が一年生達を引き連れていく。 なまえもスリザリン生の仲間とともに、地下へと続く階段を降りていった。 「私、お城の地下なんて初めて」 小さな女の子が頬を染めて隣の少女に話しかけている。 はしゃいでいるのは大半が一年生だ。 殆どの生徒は、満腹で目蓋が重く、四本柱に囲まれた天蓋付きベッドに潜り込むことしか考えられなかった。 もう少しでスリザリン寮の談話室という所まで来た時、なまえは不意に誰かに腕を掴まれ、半分開いたドアの中に引き摺りこまれた。 間髪入れずドアがしまる。 完全な暗闇に支配された小部屋の中。 冷えた石壁に背中を押し付けられたなまえの唇は、悲鳴をあげる前に強引に塞がれた。 「んんぅ──!?」 抵抗しようとした腕は易々と掴まれて拘束され、壁に押し付けられたまま、好き勝手に唇を貪られて涙が滲む。 「何を怖がっている」 唇が離れると、至近距離から呆れを含んだ声が聞こえてきた。 「ト……トム…?」 確かにリドルの声だ。 なまえは安堵すると同時に少しムッとした。 真っ暗な部屋に突然引き摺りこまれて、相手が誰かもわからないような状態でこんなマネをされたら、誰だって驚くし、怖いに決まっている。 ふ、とリドルが溜め息をついたらしい気配が伝わってきた。 まだ濡れている唇に再び唇が触れる。 今度は優しく。 宥めるように。 なまえは暗闇に向かっておずおずと手を差し伸べた。 手探りでリドルの身体を探り、その背中に縋りつく。 慣れないなまえに息をつかせる為だけに時々唇が離れ、慌てて呼吸をすると、また口付けられる。 彼が吐き出す呼気が唇に触れることで、熱い吐息は感じられる。 体温も。 しかし、彼のハンサムな顔も身体もまったく見えなかった。 こんなに暗いのにリドルにはこちらが見えているのだろうか? 確かに相手はリドルであるはずなのに、視覚で確認出来ない為に、どうしても不安になってしまう。 もしかすると、トム・リドルのふりをした別の“何か”なのではないか──そんな疑問が沸き上がってきて、暗闇の中でなまえは震えた。 「まだ震えているのか」 今度は笑い混じりの声。 「本当に…本当にトムなの…?」 リドルは笑ったらしかった。 空気の動きと気配でそれがわかる。 この意地の悪さは間違いなくリドルだ。 そうは思っても、明確な返事が返ってこないせいで不安はますます加速していく。 「や……やだ…意地悪しないでちゃんと返事してっ」 だが、やはり返事はなく、リドルはただ笑っただけだった。 ルーモスで明かりをつけようと杖を取り出そうとするも、素早く拘束されてしまう。 「明かりは必要ないだろう」 甘く囁いた唇にまたキスをされる。 次第に深くセクシャルなものに変わっていく口付けに、心とは違い、身体は簡単に熱くなっていく。 男の手がローブの裾を割って腿を撫で上げ、首筋をやわく吸われながら脚の付け根に触れられたなまえは、びくっと身を震わせた。 「ぁ、…だめっ、だめ……!」 「静かにしろ。見回りをしている管理人に見つかりたいのか」 拡げられた両足の間に男が身体を割り込ませ、覆い被さってくる。 |