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太古の昔から、夜はその暗い懐に幾つもの秘密を抱えてきた。
それは深夜のホグワーツでも同じことだ。

今宵も、ランタンを片手に管理人が深夜の見回りを行っていた。
銅像の陰や空き教室などを隈無く照らしながら、明かりはゆっくりと移動していく。

その明かりが届かなくなって暫くしてから、リドルは再び歩き出した。
目的地はもうすぐそこだ。

「ト、」

名前を呼ぼうとしたなまえをリドルが目で制する。
そのまま彼はなまえを抱き寄せている片腕に力をこめた。
黙ってついて来いということだ。
仕方なく口をつぐんで彼に従う。
透明マントを被っているとは言え、誰かに気付かれる危険は避けたいのだろう。
材料となるデミガイズの毛皮自体がかなり貴重なものなので、透明マントは馬鹿みたいに高額なはずなのだが、どうやって入手したのかと問うたなまえに、リドルはあっさりとこう答えてのけたものだった。

「金持ちの下僕がいると役に立つな」

その横では、アブラクサスが薄く笑って読書をしていた。
なるほど、出資元はここかとなまえは納得した。
大人用としてもかなり大きめのマントだが、二人で入るにはやはり密着する必要がある。
とはいえ、こうしてリドルに腰を抱かれてぴたりと寄り添いながら移動するのは、さすがに心臓に悪い。
さっきからずっと心臓はバクバク言いっぱなしだった。

そうするうちにようやく目的地に到着し、リドルがドアを開いて中へと入っていく。
そこは、監督生専用のバスルームだった。

「もういいぞ」

リドルがマントを脱いで告げる。
やっとお許しが出てほっとしたなまえは、早速辺りを見回した。

初めて見たが、物凄く広い。そして豪華だ。
正面には人魚の姿。
縦長の美しいステンドグラスからは、淡い光が伸びて、プールかと思うほど大きな浴槽を照らしている。

「観察するのはいいが、あまりはしゃぐなよ」

「うん」

リドルは複数ある蛇口を何個か捻ると、浴槽を湯と泡で満たしていった。
蛇口から迸る湯に弾かれて、良い香りのするシャボン玉がふわふわと漂う。
ある程度水位が上がったところで、リドルはさっさと着衣を脱ぎ、浴槽に入っていった。
なまえも少し離れた場所で脱ぎ始める。
脱いだ服には、念のため防水魔法をかけてから、濡れない場所に畳んで置いた。
なまめかしい仕草で髪をかき上げたり、セクシーなポーズで、しきりにリドルの気をひこうとしていた人魚は、なまえが浴槽に入って彼の隣に行くのを見ると、ふん!と特大の鼻息を吐き出した。


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