1/1 


5月。
今学期最後となるホグズミード行きの週末が訪れた。
今の学年でここに来られるのはこれが最後だ。
次は夏期休暇を挟んで来年度の秋になる。

というのに、ホグズミード村を歩く生徒達は気もそぞろで、明らかに顔色が優れない者も何人か見受けられた。
それもそのはず。
いま彼らの頭の中は近々やってくる試験のことで頭がいっぱいなのだ。

5年生の学期末に2週間をかけて実施される試験は、普通魔法レベル試験の頭文字を取って「O.W.Ls(ふくろう)」と呼ばれている。
将来の仕事にも大きく影響する重要な試験で、一定の成績を修めた生徒だけが来年度からのNEWTレベルの授業に進む事ができるのだ。

「トムは試験の心配なんてしてないでしょう」

バタービールを飲み干してトム・リドルを見る。

「『優・O(大いに宜しい)』ばかりに決まってるもの」

「そうだな。だからこうして余裕を持ってお前に付き合ってやっている」

なんて言い種だろう!
ぷりぷり怒って睨んでみても、学校一の天才はどこ吹く風だ。

その唇がふっと綻んだ。

「泡がついてる」

「えっ」

「ほら」

清潔なハンカチで口元を拭われる。

「仕方ない奴だな」

「うう…」

「だから放っておけない。お前には僕がいないとダメなんだ」

悔しいが彼の言う通りだった。
リドルがいなければ、きっと自分は生きていけないだろうという確信に近い思いがある。

「試験のことは心配いらない。僕がちゃんと教えてやる」

「うん…!」

すっかり気分がよくなったので、デザートを追加して頼むことにした。
ここのアップルパイは最高に美味しいのだ。

アップルパイを注文するのを見ていたリドルは、わざとらしくため息をついてみせた。

「太るぞ。ホグワーツまで転がして帰らないといけなくなったらどうする」

「トムの馬鹿!意地悪!」

アップルパイはやっぱり最高に美味しかった。
転がしてじゃないけど、学校までは手を繋いで帰った。


  戻る  
1/1

- ナノ -