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リドルに勉強を教えてもらったお礼に、お菓子を作って渡すことにした。

色々と考えたのだが、手持ちのお金で買えるもので彼を満足させるものが思い浮かばなかったのだ。
食べ物なら後腐れなく借りを返せるだろうと思ってのことである。

密かに厨房に通うこと数日。
屋敷しもべ妖精達にアドバイスしてもらいながら何度か試作品を作って試行錯誤した結果、それなりに美味しいものが出来たと思う。

だが、念のため、ダンブルドアに味見をお願いすることにした。

「ダンブルドア先生、お願いがあるのですが」

放課後、変身術の教室を訪問して事情を説明すると、ダンブルドアは快く味見役を引き受けてくれた。

「女性から手作り菓子を頂くのは何十年ぶりかの」

「そんなに喜んで頂けるとは思いませんでした」

「おお、嬉しいとも。可愛い生徒からの可愛らしいお願いじゃ。喜んで引き受けるのは教師として当然のこと」

焼き菓子を口にしたダンブルドアが、水色の瞳を輝かせる。

「これは美味い!これならば店に出しても問題なく売れるじゃろう」

「ありがとうございます、先生」

「自信を持って渡しなさい。わしのお墨付きじゃ」

「はい、ダンブルドア先生」

改めてお礼を述べてから教室を出て地下に向かう。
談話室にいるといいんだけど、と思いながら歩いていると、突然誰かに腕を掴まれて空き教室の中に引っ張り込まれた。

「騒ぐな。僕だ」

悲鳴をあげかけた口を手で塞がれ、呆れたような声で耳元でそう囁かれる。

「トム?」

ほっとした身体から力を抜くと、口を塞いでいた手も外された。
だが、壁とリドルに挟まれたままの態勢は変わらない。

「ダンブルドアの所で何をしていた」

「えっ」

「隠しても無駄だ。僕に嘘が通用しないことは知っているだろう」

「えっと…」

「言えないようなことか?」

完全に尋問口調である。
なまえは仕方なく、ポケットの中から焼き菓子の入った包みを取り出した。

「これを味見してもらっていたの」

包みを開いてみせると、リドルはちょっと間を置いてから焼き菓子をひとつ摘まみ上げた。

「あの…この間は勉強を教えてくれてありがとう。そのお礼に、と思って」

リドルが何も言わないのが怖い。
彼は黙ったまま摘まんでいた菓子を口に運んだ。
さくりと齧って一口食べたあと、そのまま残りも口に入れてさくさく食べてしまった。

「まあ、悪くはない」

「美味しい?」

「そうだな。お前にしては上手く作れているんじゃないか」

「ひどい!」

小さく笑ったリドルが唇を重ねて来る。
優しいキスに、先ほどまでざわめいていた心が和らいでいくのを感じた。

「今度からは誰かに味見させずに、真っ直ぐ僕の所に持って来い」

「もしかして、ダンブルドア先生に焼きもち妬いてるの?」

「そうか、お仕置きされたいのか。それなら話が早い。幸い、ここには誰も来ないしな」

「いやああっ」

「そんなに喜んでもらえて僕も嬉しいよ、なまえ」

優しげな声音なのが余計に恐怖心を煽られる。
ローブの中に潜り込んできた手に胸を鷲掴まれて、ひっと息を飲む。

「可愛い女だな、お前は」

いっそ慈悲深いと思えるような笑みをハンサムな顔に浮かべてリドルは言った。

そう思うならお仕置きは勘弁してほしい。

「トム、お願いだから…」

「大丈夫だ。僕がお前にひどいことをしたことがあるか?」

むしろひどいことばかりされているなまえは震えながらリドルを見上げたが、どうにも許してもらえそうになかった。

「安心しろ。お前も残さず食べてやる」

こうして焼き菓子は無事リドルのお腹に収まり、なまえもまた美味しく食べられたのだった。


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