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暖炉の中で薪がはぜる音がやけにはっきりと耳に届く。
緩慢な動作で目を開いて、リドルはようやくそれまで昔の夢を見ていたのだと気付いた。
ここはホグワーツではないのだ、と。
ゆっくり視線を横に向ければ、二重の硝子窓の向こうに、音もなく舞い降りてくる雪が見える。
どうやら一晩中降り続いていたようだ。
山間のこの小さな小屋はすっかり雪に埋もれている事だろう。
この様子では何処にも出掛けられそうにない。
それでなまえはあんなにどっさりと食料やら生活用品やらを買い込んでいたのか、と納得した。
まるでリスか何かのようにせっせと準備をしていた姿を思い出して、唇の端を吊り上げる。

「『巣ごもり』か…」

呆れ混じりの声で呟いたリドルは、視線を自分の胸元辺りへと移した。
仰向けに横たわった彼の上に半ば乗り上げる形でなまえが眠っていた。
リドルの逞しい胸板に頭を預けて、幸せそうな顔ですやすやと眠っている。
その柔らかくて温かい体は小動物を思わせた。
それでいて、男を受け入れて包み込むだけの包容力があるのだから不思議なものだ。
安心しきった様子で抱かれて眠るなまえの後頭部に手を置き、そうっと撫でる。
なまえは起きるどころか、リドルの胸に頬を擦り寄せて、より一層体を密着させてきた。
むにゅっと音がしそうなほど、たっぷりとした質量を持つ胸ごと。

「これでは、パトローナスは穴熊ではなく、コロコロ太った雌牛になりそうだな」

裸の肌に押し付けられて潰されている豊満な乳房の感触は、昨夜散々堪能したはずなのにまた新たな劣情を呼び覚ますほど官能的だったが、リドルはもう一度眠る事にした。

雪が止むまで──もう少しの間だけ、仮初めの平穏に身を浸しているのも悪くない、と思いながら。


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