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肌寒さを感じて目を覚ました。

見れば、腕に鳥肌がたっている。
まだぼんやりして働かない頭のまま、すぐ傍らにあった温かいものに本能的に擦り寄ると、それがもぞりと動いて、伸びてきた腕に引き寄せられた。
えっ、とドキリとする。
しっかりと懐に抱き込まれてから、マユはソレがスネイプであったことに気がついた。

今はまだ三月。
春の気配は遠く、ホグワーツは未だ雪に閉ざされている。
シーツの中身は裸なのだから、それは寒いに決まっている。
しかし、肌と肌が触れあっている部分はあたたかかった。

「せんせい…」

「ここにいる」

気持ちいい。
触れているところから溶けていきそうだ。
スネイプの匂いと体温に包み込まれている内に、ついまたうとうとと微睡んでしまっていたらしい。
次に目を覚ました時には毛布にくるまれるようにして眠っていた。

スネイプの姿はない。

きょろきょろしているとドアが開いた。
大きな黒い蝙蝠のような姿が現れる。

「起きたのか」

「おはようございます」

「少し待っていろ」

そう言うと、スネイプはまた出て行ってしまった。
仕方なく、毛布にくるまれたまま待つことにする。

ここはスネイプの私室の隣にあるベッドルームだ。
では、彼はマユより先に起きて身支度を整えた後、隣の部屋で生徒のレポートに目を通すなりしていたのだろう。
邪魔にならない内に帰ろう、と脱ぎ散らかしていた服を拾って手早く身につける。

すると、またドアが開いてスネイプが戻って来た。
ベッドルームに入ってきた彼は手にトレイを持っていた。
クロワッサンが二つと、ベーコン数枚にスクランブルエッグ、それに湯気をたてるホットミルクが乗っている。

「そこに座って食べたまえ」

「ありがとうございます」

言われるがままベッドサイドの椅子に腰を下ろし、食事の乗ったトレイを受け取る。

まずは身体をあたためようと、ホットミルクを手に取った。
両手で包み込むように持って手を温め、ふうふうと少し吹き冷ましてから口をつける。
蜂蜜が溶かしてあるらしく、甘くて美味しい。

「昨日はすまなかった」

「えっ」

「無理をさせてしまっただろう」

思い出してマユは顔を赤らめた。

「改めて言われると恥ずかしいです」

「そういうものか」

「そういうものです」

傍らに立ったスネイプが髪を撫でてくるのがくすぐったい。
感触が、というよりも心情的に。

「私は丈夫だから平気です」

「昨夜我輩が抱いた時には、『壊れちゃう』と鳴いて悶えていたが」

「先生の馬鹿!破廉恥!」

「こうも言っていたな。『先生のものになれて嬉しいです』」

「先生の馬鹿!破廉恥!」

「そうかね?」

唇を歪めて笑ったスネイプが身を屈めてくる。

口付けは、ホットミルクより甘くて蕩けそうだった。


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