樺の木、34p。杖芯は不明。 私が知っているスネイプ教授の杖の情報だ。 ちなみに、樺の木というのは教授の誕生日をもとにした推測である。 今私が持っているのは、向こうの世界のハリポタ展で買ったレプリカだ。 この杖のお陰でこちらの世界へ来ることが出来たのだが、未だにどういう力が働いてそうなったのか不思議でならない。 「またそれを見ていたのか」 すっかり耳に慣れたバリトンが聞こえて、慌てて杖をしまおうとするが、その前に奪われてしまった。 「我輩とダンブルドア校長で調べたが、微かな魔法の痕跡があったことを除けば、これはただの棒切れに過ぎない」 魔法の痕跡。 そうなのだ、ポートキーに似た魔法力を微かに感じたらしい。 誰かがこの杖に魔法をかけたことは確かだが、その誰かは本当に人間なのだろうか。 そう言うと、スネイプ教授は鼻で笑った。 レプリカの杖をくるりと回して私に差し出す。 「神の仕業だとでもいいたいのかね?」 「先生は神様を信じていないんですか?」 「さて」 スネイプ教授から杖を受け取りながら尋ねれば、さらりとかわされてしまう。 「それより、仕事の話だ。午後は我輩の授業を手伝って貰う」 「材料運びと準備ですね」 「終わった後は生徒が提出した魔法薬を回収し、我輩の私室へ」 「わかりました」 働かざる者食うべからず。 異邦人である私は、このホグワーツに置いて貰う代わりに雑用や事務仕事を任されているのだ。 「昼食後すぐに動いてもらわねばならない。昼は大広間で我輩と昼食を共にして貰おう」 「はい、先生」 スネイプ教授と一緒にご飯を食べられるなんて、願ったり叶ったりだ。 ずっと憧れだった人が、確かに存在しているという事実。 それが何より嬉しい。 だが、懸念事項もあった。 そう、スネイプ教授の生死に関わる問題である。 このままではこの人は死んでしまう。 それまでに何とか助ける方法を考えなければ。 日中は事務員として働き、夜は図書室で借りた本を読みあさる日々が続いている。 しかし、今のところ有効な方法は見つかっていない。 「何を調べているのか知らんが、根をつめすぎるのはよくないな」 「先生も研究に没頭することがあるじゃないですか」 「我輩と君では事情が違う」 「ちゃんとしっかり食べて下さいね。朝食抜くのは無しです」 「君はいつから我輩の母親になったのだ」 「私が母親ならもっとしっかり守ってあげてますよ」 「生憎だが、君に守られるほどひ弱ではない」 知っています。 誰よりも勇気があって強い人。だからこそ儚い人。 私はこの人を守るためにこの世界に連れて来られたのだと勝手に信じている。 「行くぞ。混みあう前に昼食を済ませたいのでね」 「はい、先生」 黒いマントを翻して歩いて行くスネイプ教授の後ろについて歩きながら、決意を新たにする。 あなたは私が必ず守ってみせます。 絶対に。 |