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外は雪がちらついているが、家の中は暖かい。
セブルスは暖炉の前のソファに深く沈み込んで、何やら分厚い本を熱心に読みふけっている。

最後の戦いの後、校長職を退いたセブルスは請われてホグワーツの名誉教授の座に落ち着いた。
今は時々出かけていって、魔法薬や、闇の魔術に対する防衛術の特別講義を行なっている。
それ以外の時は、家でのんびり読書をして過ごしているか、たまに薬草採取に出かけたりしていた。
本人はそれなりに今の生活を楽しんでいるらしい。

私はというと、もうお昼なので昼食の支度をしている。
今日のメニューは、ハムとチーズのサンドイッチにツナサラダ、それにトマトのスープ。
ごく一般的な英国の昼食である。
違うのは、それらを杖を使って魔法で調理器具を指揮して作っているという点だ。
何しろ私達は魔法使いなので。

トマトスープがぐつぐつと音をたて始めたので、コンロの火を消す。
あとは余熱で充分だ。

新鮮なレタスを千切って、ノンオイルのドレッシングとツナと他の野菜と一緒に混ぜ合わせる。

ハムとチーズを挟んだパンはしっとりとしてふかふかと柔らかいお気に入りのパン屋のものだ。

「よし、出来た」

完成した昼食をトレイに乗せて暖炉の前のセブルスの元まで運んでいく。

「ご飯ですよ」

「ああ、もうそんな時間か」

親指と人差し指で目頭を摘まんで息をついたセブルスにウェットティッシュを渡す。
これはマグルのスーパーで買ったものだ。

読みさしのページに栞を挟んだセブルスは、ウェットティッシュで丁寧に手を拭き、サンドイッチを手に取ってかぶりついた。

「スープはトマトか」

「オニオンのほうが良かった?」

「いや、丁度食べたいと思っていたところだ」

一緒に暮らし始めた当初は、君の作ったものなら何でも食べると言って、何を出しても文句をつけることのなかったセブルスだが、最近では特に好きなメニューや、その時に食べたいものを教えてくれるようになっていた。
大きな進歩である。

「美味いな」

トマトスープを一口飲んだセブルスが満足そうに頬をゆるめたので、私は心の中でガッツポーズを取った。

眉間の皺は相変わらずだが、近頃の彼は以前に比べて随分表情が和らいできたと思う。

それこそハリーあたりが見たらギョッとするのではないだろうか。

「午後はどうする?」

「んー…私は特に予定がないので読書でもしようかなと」

「そうか、そうだな。それもいいだろう」

二人ソファに並んで座って、それぞれ本を読みながら、時々視線や言葉を交わして。
それだけで充分幸せなのだと思える今が嬉しい。

「たまにはミステリーではなく、我輩の蔵書を読んでみてはどうかね」

「セブルスの読む本は難しいから」

外はまだ雪が降っている。
この様子ならまた積もるかもしれない。

それでも、愛しいひとと過ごす幸せな時間はあたたかく、かけがえのないものだった。


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