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「んん…?」

目が覚めると、そこは自分の部屋ではなかった。

昨夜はスネイプ先生と生徒にはとても言えないような行為をしたのだが、先生の匂いと体温に包まれて、そのまま朝まで気持ちよく眠ってしまっていたらしい。

「ゆっくり寝ていて構わない。朝食はここに取り寄せる」

慌てて起き上がろうとする私を制して、スネイプ先生は自分のローブを手元に引き寄せると、そのまま手早く自分だけ着替えてしまった。

いつも通り、首元まできっちりボタンを留めた黒衣姿になった先生はストイックで、どう見ても昨夜執拗なまでにねちっこく私を求めてきた人には見えない。
いやらしいことなどけしからん!といった感じだ。

でもこの人、昨日なんて、あんなことやこんなことまでしていたんですよと皆に言ってしまいたい。

「大人しく寝ていたまえ」

私をベッドに残したまま、スネイプ先生は部屋を出て行った。
たぶん、厨房の屋敷しもべ妖精に話をつけに行ったのだろう。

「よいしょ、と」

あちこち軋む身体に鞭打って起き上がる。
先生の言う通り二度寝するのも魅力的だったが、すっかり目が覚めてしまったので起きることにしたのだ。

「服、服、と……いたた」

誰かさんに散々酷使されたせいで腰が痛い。
この歳で腰痛なんて洒落にならないと思いながら、散らばった服をかき集めて身に付けた。

でも、それが限界だった。

「はぁ……」

力を使い果たしてベッドに倒れ込む。

昨日何回したんだっけ。
3回…違う、4回。
──4回!?
びっくりだ。

あんなにエロいことなんて興味がありませんという顔をしているストイックなスネイプ先生が、ベッドに女を引き込んで4回もセックスをしたなんて。
マクゴナガル先生あたりが知ったら卒倒してしまうかもしれない。
彼の教え子達もさぞかし驚くことだろう。
私だって先生が絶倫だなんて知らなかった。

「服を着たのか。ちょうどいい。今、朝食を用意する」

絶倫のスネイプ先生が帰って来て言った。

私がベッドの縁に座ったのを確認してから、杖でコンコンとテーブルを叩く。
すると、そこにはお皿に盛り付けられた料理とかぼちゃジュースが現れた。
スネイプ先生の合図で厨房から転送されてきたのだ。

「豪華ですね」

「そうか?」

私はテーブルの上に並べられた朝食を見た。

目玉焼きが二個、ベイクドビーンズに、ソーセージ。
焼きトマトとポテトスコーン、ベーコン二枚にトースト。

スコットランドの朝食の定番、フル・スコティッシュ・ブレックファストだ。

「これは君の分だ。好きなだけ食べたまえ」

「ありがとうございます。先生は?」

「我輩はトーストだけでいい」

「ちゃんと食べないとまた顔色が悪いってマダムに心配されますよ」

「彼女は仕事柄、心配性なのだろう」

「私も心配です」

先生は口をへの字に曲げると、渋々といった風にベーコンを一枚取って食べた。

「目玉焼きも食べて下さい」

「君は我輩の妻にでもなったつもりかね?」

文句を言いつつも、先生はちゃんと目玉焼きに手を伸ばした。
それを見届けて、私もソーセージを口にする。
うん、美味しい。
スクランブルエッグも欲しかったなあ。

「君は幸せそうに食べるな」

「そうですか?」

もぐもぐと焼きトマトを食べて飲み込むと、私はかぼちゃジュースを手に取った。
程よく冷えたジュースで渇いた喉を潤す。

「先生と一緒に朝食を食べられて、幸せです」

「そんなことで幸せを感じられるとは、単純なことだ。羨ましいですな」

厭味っぽく言いながらも、先生がまんざらでもないらしいってこと、ちゃんとわかっていますからね。

そんな風に優しい眼差しを注がれていたら、誰だって愛されているんだってわかりますよ。
不器用だけど優しい、スネイプ先生。


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