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自家製ローストビーフに、オイルを塗ってオーブンで焼いたローストポテト。
ちょっとお腹に重いかなと思わないでもなかったが、慣れてしまえば意外と食べられるものなのだ、これが。

食が細そうなイメージがあったスネイプ先生でさえ、平気な顔で食べている。

「マユさん、こちらへどうぞ」とドラコ・マルフォイに紳士的に誘われたので、今日はスリザリンのテーブルで食べている。

ホグワーツの事務員である私は、毎日4つある寮のテーブルのどれかにお邪魔して食事をとることになっていた。

教員席の端っこを与えられそうになったのを辞退して、積極的に生徒達と交流を持っていきたいという主張を受け入れられた結果である。

スネイプ先生の助手の真似事をしているせいか、何故か妙にドラコに気に入られてしまい、最近ではスリザリンのテーブルにつくことが多い。

「日本はどんなところですか」

「四季ごとに風物詩があって良い所ですよ」

「温泉があると聞きました。やはり皆裸で入るんですか」

「そうです。裸のお付き合いというのがあって、基本的には皆裸。混浴もありますよ」

「それって、男女が一緒に入るってことですよね?」

「はい」

辺りがざわついた。
女の子達が信じられないといったように紅潮した顔を見合わせている。
こんな食事を毎日食べているのに、彼女達のスタイルの良さといったら羨ましいくらいだ。

「マユさんとスネイプ先生はどういったご関係ですか?」

「事務員の仕事の傍ら、スネイプ先生のお手伝いをさせて頂いています」

「先生の私室に呼ばれることも多いそうですが」

おおう、鋭く切り込んでくるね、ドラコくん。

「時々ね。お手伝いしたご褒美にお茶をご馳走になっています」

「なるほど」

まだこの時点では、ドラコはスネイプ先生になついている。
彼らの仲が拗れるのは、ヴォルデモートが彼を仲間に引き込んでしまうからだ。
家族を人質に取られた状況で孤独な戦いに身を投じなければならなかったドラコは、あれほど良好な関係だったスネイプ先生でさえ信じられなくなってしまうのである。
でも、今はまだ。

「今度僕もご一緒したいです」

「じゃあ、スネイプ先生にお願いしておきますね」

「ありがとうございます」

輝くような笑顔を見せる少年に、これから降りかかる重い試練の影はない。

「何の話ですかな?」

いつの間にかスネイプ先生が私のすぐ後ろにやって来ていた。
たぶん話は聞いていたはずなのに、わざわざ尋ねてくるあたりがねちっこい先生らしくてとても良いと思います。

「ドラコが先生と一緒にお茶がしたいそうです」

「では、今度招待しよう」

スネイプ先生はあっさりと承諾してみせた。
やはりドラコには甘い。

しかし、当のドラコは微妙な表情だ。
嬉しくないのかな。

「マユさん、今度一緒にホグズミードに行きませんか。僕が案内します」

「それには及ばない。ホグズミードは既に我輩が案内してあるのでな」

ドラコの白い頬にさっと赤みがさす。

「生徒と交流を持ちたいと仰っていたので、協力したいんです」

彼はプラチナブロンドを撫で付けると、口調ばかりは丁寧に言い返した。

「なるほど」

スネイプ先生とドラコが見つめ合う。

気のせいか、二人の間に火花が散っているような?

「ミス・ミツキ、出かける際には必ず我輩に声をかけたまえ。我輩も同行しよう。良いですかな?」

「はい、スネイプ先生」

「楽しみにしていますね、マユさん」

バチバチバチ!
またもやスネイプ先生とドラコの間で火花が散る。

これは、もしかして……いや、そんな、まさかね。
気のせい。気のせい。


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