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赤ちゃんの泣き声が聞こえた気がして目が覚めると、先に起きていたセブルスが赤ちゃんを抱っこしてあやしてくれていた。

「ごめんね、ありがとう」

「気にするな。疲れているのだろう、寝ていたまえ」

セブルスが赤ちゃんを抱っこしたままキッチンへと向かう。

『粉ミルクはスプーンですり切り5匙、100グラムのお湯で作る』と書かれたメモがキッチンに貼ってあるのだが、セブルスはちらりと目で確認するだけである。

何しろ魔法薬の調合のエキスパートなので、ミルクの作り方もすぐにマスターしてしまったのだ。

手際よくミルクを作って、自分の肌で温度を確認し、セブルスは赤ちゃんに哺乳瓶でミルクを飲ませてくれた。

「慌てて飲むな。ゆっくり飲め」

どうやらお腹がすいていたらしい。

それにしても、抱っこする姿が様になっている。
最初の頃、おっかなびっくり抱っこしていたことが嘘のようだ。

私達は日々親として成長しているんだなあとしみじみ思った。

赤ちゃんもすくすくと成長してくれている。
母乳とミルク半々で育てているのだが、今のところ問題は起こっていない。

セブルスが赤ちゃんを縦に抱いて背中を軽く叩いてげっぷをさせていた。

「この子はきっとお父さん子になるわね」

「そうか?」

「だって、今からもうパパのことが大好きなんですもの」

お腹が満たされた赤ちゃんはセブルスの腕に抱かれて早くもうとうとしている。
自分を守ってくれる力強い腕の中で、安心しきっているのがよくわかる。

「あなたと結婚出来て、この子が生まれてくれて、本当に良かった」

「それはこちらの台詞だ。闇の中にいた我輩を君が救い上げてくれた。そればかりか、家族になってくれて心から感謝している」

私はセブルスの顔を見つめた。大好きな夫の顔を。

年齢を重ねた男性の円熟した魅力が感じられるそこには、もう昏い影はない。

結婚してからは毎日が初めて知ることの連続で、思い悩む暇などなかったとは、セブルスの談である。

それでいいのだと思う。

人は過去を向いたままでは生きていけない。
こうして赤ちゃんを授かった今は心からそれを実感していた。
セブルスも同じ気持ちなのではないだろうか。

彼が抱える闇はあまりにも重すぎて、かつての彼に常に昏い影を落としていた。

その寂しい孤高の生き方が悲しくて、殆ど身を投げ出すようにして私が持てる全てを彼に捧げてきた。

その結果がこのあたたかい家庭だと思うと、泣きたくなるほどに嬉しい。

「早く寝たまえ。明日も忙しいぞ」

「うん、おやすみなさい」

赤ちゃんをベビーベッドに寝かしつけたセブルスが私の横に身体を滑り込ませてくる。
すぐに彼の腕に身体を引き寄せられて、背中から抱き込まれるような形に収まった。

「ねえ、セブルス」

どういう反応をするかなとワクワクしながら口を開く。

「兄弟は何人欲しい?」


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