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こちらの世界に来てからというもの、毎日何かと忙しい。

英語も魔法も勉強しなければならないし、ホグワーツの事務員としての仕事も覚えなければいけなかったからだ。

一度もホグズミード村を訪れたことがない私のために、今日は特別にスネイプ先生が案内してくれることになった。
先生曰く、あくまでも魔法界の村のあり方を学ぶためという名目で。

「あっ、ゾンコのいたずら専門店!」

「くだらん物ばかり売っているが、生徒には人気がある」

「あっ、ハニー・デュークス!」

「君も甘いものが好きなのかね?まあ、君も一応女性だからな」

「一応ってひどいです、先生!」

映画や本で知っていた店を実際にこの目で見るとなるとさすがに興奮度が違う。
自分が物語の中に入り込んでいるのだと改めて思い知らされた気分だった。

「叫びの屋敷は見なくていいのかね?」

「あそこは…」

私は、この先そこで何が起こるのかを知っている。
とてもじゃないが物見遊山に訪れたい場所とは言えなかった。

「怖いのか?」

私が口ごもったのを、先生は上手く勘違いしてくれた。

「まあ、君も一応女性だからな」

確かに怖いのだが、先生が考えているのとは別の理由からくる恐怖心だ。
しかし、幽霊屋敷を怖がるのは当たり前のことだと思ってもらえたのは良かった。
誤魔化すのは心苦しいから。

「三本の箒へ行くぞ」

スネイプ先生がそう言ってくれたのでほっとした。
喜んで先生のあとをついて歩いていく。

三本の箒は映画で見たそのままの佇まいだった。

「あら、いらっしゃいませ」

ドアを開けて入っていくスネイプ先生の後ろに続くと、マダム・ロスメルタの色っぽい声に出迎えられた。
声だけじゃなく容姿も色っぽい。
これは男性陣がメロメロになるわけだ。

「蜂蜜酒とスコッチウイスキーを」

「えっ、バタービールじゃないんですか」

「あれは子供の飲み物だ」

ハーマイオニーみたいに泡で髭をやりたかったとはとても言えない雰囲気だ。

「村はどうだった」

「素敵な所でした」

「そうか」

「連れて来て下さってありがとうございました」

「礼には及ばない」

スネイプ先生の口調は素っ気ないけれど、そういう質問をしてくれるのは気にかけてくれている証拠なんだと思う。
本当は優しい人なのだ。

「スネイプ先生とのデート、とっても楽しかったです」

蜂蜜酒を飲んで少し気が大きくなっていた私がそう言うと、スネイプ先生はむせていた。

ちょっと可愛いと思ってしまってごめんなさい。



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