自分でもらしくないと思うが、こうして届くはずのない手紙を書いている。 君は今就寝準備をしている頃だろうか。 それとも、世界が変わればやはり時差も存在しているのか。 いずれにしても、君が何の憂いもなく健やかな眠りについていることを願っている。 我輩のほうは、さして報告するようなことはない。 ホグワーツの職は辞して、今は気楽な隠居生活だ。 最近では、君が救ってくれたこの命の在り方について考えることが多い。 君がいなくなってしまったこの世界で、どうすれば、君のいない長い人生を生きていけるのか、夜毎日毎に考えずにはいられない。 そうして、巡りめぐった思考の最後には、ありえない事柄を夢想してしまう。 神の気まぐれか何かは知らないが、また世界を越えた君と再び巡り逢う、そんな奇跡のような出来事が起こるのではないか、と。 笑ってくれたまえ。 我輩はすぐ側にあった大切なものに気付かず、失った過去にばかり囚われていた。 君がいなくなって、はじめて君がどれほど大切な存在であったか、思い知らされた。 君を愛している。 再び巡り逢うことが出来たなら、君をこの腕の中に捕らえて二度と離さないと誓う。 だから、 もしも、この手紙が届いたならば、どうかもう一度我輩にチャンスを与えて欲しい。 哀れな男に、どうかもう一度だけ逢いに来てくれ。 例え、二度と逢えなくとも、我輩の心は常に君と共にある。 書き綴っている内にすっかり夜も更けてしまった。 我輩はこの手紙を梟に託してベッドに入ろうと思う。 君が夢に出てきてくれることを願いながら。 セブルス・スネイプ |