「手前、太宰と寝たって本当か?」 「ええっ、なんでそんな話になってるの?」 「違うのか」 「一緒のベッドで寝ただけだよ」 「それだけでも充分やべえ」 中也くん目がマジだ。 「あいつだけはやめとけ。泣くことになるぞ」 「あー、やっぱり今までも女の子を泣かせてきたんだ?」 「まあ、そんなとこだ」 訓練帰りだという中也くんと、それから少し話をした。 なんでも100人以上もいる黒服の集団を相手に“軽く”トレーニングをしてきたのだとか。 ちょっと想像を絶する光景だ。 それにしても、中也くん、2時に寝て8時起きなんてつらくないのかな。 あの運動量で睡眠時間それだけってかなりきついよね。 もしかするとショートスリーパーなのかもしれない。 あるいは、ずっとそういう生活だったから慣れてしまったとか。 マフィアはやっぱり大変なんだなあ。 「暇なら飯でも食いに行くか」 「いいの?」 「首領に許可はもらってある」 いつの間に……でも、正直嬉しい。 自由に外出出来ないのがこれほど息苦しいことだとはおもわなかった。 「ありがとう、中也くん」 「礼なんていらねえよ。ただの息抜きだ」 「ふふ、そっか」 最初の夜から思っていたけれど、中也くんは気遣いの出来る優しい子だ。 年上のはずの私が気を遣われてばかりなのは情けない限りだが、いつか何らかの形で恩返しをしたいと思う。 「じゃあ、行くか」 「うん!」 中也くんについて地下駐車場に降りると、彼は一台の車のもとへ向かった。 「これ、中也くんの?」 「ああ、まだお抱え運転手はいねえがな」 いずれ幹部になったら運転手付きの高級車に乗るのが目標らしい。 わかるなあ。男の子なら夢は大きく持たないとね。 何はともあれ、私は中也くんの車の助手席に乗せてもらい、ヨコハマで一番美味しいと評判のラーメン屋さんに連れて行ってもらったのだった。 さすが中也くん、私が食べたいと思っていたものをぴたりと当ててきた。 森さんのところではそれはもう美食家もびっくりな美味しいフレンチやらイタリアンを食べさせて頂いていたから、庶民的な味が懐かしくなりはじめていたのだ。 中也くんお勧めとあって、ラーメンはめちゃくちゃ美味しかった。 ありがとう、中也くん。 この恩は忘れないからね。 |