「すまなかったね、突然呼び出してしまって」 「いえ、森さんと食事をご一緒出来て嬉しいです」 「そう言って貰えると誘った甲斐があるよ。ありがとう」 「こちらこそありがとうございます」 朝、お風呂に入っておいて良かった。 綺麗めのブラウスとスカートを選んでおいて良かった。 森さんは今朝も、知的でダンディで素敵だった。 ナイフとフォークを操る手つきも優雅で、同じテーブルで食事をしているこちらが気後れしてしまうほどに。 「朝から太宰くんの相手は疲れただろう」 「いえ、お話出来て良かったです。最初は仲良く出来るか不安でしたけど」 「中原くんはどうだい?」 「中也くんは優しくて頼りになる人ですよね」 「そうか……あの二人は組織の中核を担っているが、特に複雑な生い立ちでね。仲良くして貰えると助かるよ」 「はい、頑張ります」 表面上は和やかに進んでいた食事の席に、突然バン!とドアが開かれたかと思うと、金髪の少女が足音も荒く室内に入って来た。 「仲間外れにするなんて酷いわ、リンタロウ!」 「ごめんよ、エリスちゃん。ちょっと大事なお話があったものだから」 「あたしのこともちゃんと紹介して!」 「ああ、そうだね」 呆然としている私に向かって、森さんは微笑んでみせた。 「彼女はエリスちゃん。昨日から君とお話がしたいと言ってきかなくてね」 「あなたがなまえね。あたしはエリス」 「初めまして。苗字なまえです」 「もっと普通に話していいわ。あと、あたしはリンタロウの隠し子じゃないから安心してちょうだい」 エリスちゃんはズバリ私が考えていたことを言い当てて笑った。 「ねえ、なまえ。あなたがいた世界のお話を聞かせて」 「エリスちゃん、まだ食事中だよ」 「うー…わかったわ。また後でね、なまえ」 エリスちゃんは現れた時と同様に突然風のように去って行った。 「驚かせてすまない」 「えっと…」 「彼女は私の異能で生み出された異能生命体でね」 「森さんの?」 「そう。このことは秘密だよ」 「は、はい、わかりました」 「いい子だ」 瞳を細めて微笑んだ森さんが美しかったので、私は少し見惚れてしまった。 二人だけの秘密が出来たようで嬉しいけれど、これってもしかしてトップシークレットなんじゃないだろうか。 その後も森さんが会話をリードしてくれて、楽しく食事をすることが出来た。 |